文・ 位藤 邦生(Ito, Kunio)
附属図書館長
我々が現在生きているのは「高度情報化社会」のただ中だ、とよく言われます。むしろ時代のキャッチフレーズの感さえあります。
ところが、どのような情報が、どこに、どれほどあり、それをどのようにして集めればいいのか、また、多くの人々に役立つはずの、今自分が持っている情報を、どのような形に整えて、どんなふうに発信すればいいのか、等についての、知識の量や、その質は、個人によって大きく異なります。高度情報化社会における、強者弱者が出現するゆえんです。
図書館がさまざまな情報の受信・発信の基地として機能しなければならない理由も、ここにあり、公平で広範囲な情報提供の窓口としての、図書館の役割は、自由で平和な社会をささえる支柱の一つであろうと思います。
広島大学附属図書館では、全学の教育研究体制を、主として図書館資料に基づく各種情報および情報関連サービスによって支援するために、全国の大学にさきがけて、図書館専用電子計算機を導入しました。一九七二年のことです。現在は、雑誌業務、目録業務、閲覧業務等のほぼ全業務・サービスを、電子計算機で処理しています。
また全学の蔵書約二八〇万冊のうち、約百万冊をデータベース化し、オンライン蔵書目録(OPAC)としてインターネット上に公開しています。そのほか外国語雑誌目次データベース、CD−ROMサーバによるMedline情報検索サービス、図書館ホームページ等のサービスも、ネットワーク上で展開しています。
時間の制約等で図書館に足を運べない場合でも、これらのサービスを利用して、研究室や教官室から容易にアクセスできるようになったわけです。
しかし問題がないわけではありません。遡及入力には膨大な費用がかかります。現在のところ、基本的には、電算機入力開始以前の図書資料に関する蔵書情報は、従来の図書カードを検索する必要があり、かなりの手間がかかるのです。
このことは図書資料の他機関との共同利用上のネックにもなっています。また、古い文献の利用度は、自然、社会、人文科学の諸分野でかなり異なっており、遡及入力も分野毎の需要を考慮に入れながら行うほかありません。しかし、米国等の情報先進国では、遡及入力はほぼ完了したとも聞いており、いずれは全図書資料のデータベース化が果たされなければならないでしょう。
本学の附属図書館が学術情報センターの情報検索サービスを開始したのは、一九八八年のことです。利用は年を追って増加しています。その後もCD−ROMサーバーによるMedline情報検索サービス開始(九六年)、外国語雑誌目次データベース検索システムのサービス開始(九七年)等、各種情報関連サービスは、近年急速に充実してきており、利用者の関心も深まっています。
附属図書館では本年三月「広島大学附属図書館の電子情報化構想」を策定しました。そこには一.電子情報化の目的、二.情報利用環境の課題、三.電子情報化の推進、付・実施計画(アクションプラン)に分けて、附属図書館の情報化戦略が展開されています。
「資料の電子化」の面では、本学所蔵貴重書のデータベース化等、「情報利用環境の整備」ではCD−ROMサーバーの増設等が計画され、ほかにも種々の計画の実施が鋭意検討されています。
その他来年の創立五十周年に向けて「森戸文庫」のデータベース化・電子情報化を開始、西図書館の学習支援機能充実のために、情報教育研究センターおよび外国語教育研究センターと共同して、マルチメディアを使用した実験的教育研究の場を設けるなど、大学の全構成員の協力のもとに、大胆な挑戦がなされようとしています。
広島大学は今、原田康夫学長の陣頭指揮のもと、これまでの情報利用環境の立ち遅れを一気に克服しようとしています。図書館の情報化も全学の状況に呼応して劇的な変化を見せる可能性があります。どうぞ今後を注目してください。そして建設的なご意見や要望を奮ってお寄せください。
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