地域から待望される生涯学習型夜間大学院   

─アンケート調査結果報告─

文 ・鈴木 盛久(Suzuki, Morihisa)
生涯学習型夜間大学院専門委員会
アンケートワーキング・グループ座長

 生涯学習型夜間大学院専門委員会は、夜間大学院への具体的ニーズを探るため、昨年から今年にかけてアンケート調査を実施しました。その結果、夜間大学院の設置に関して地域社会から熱い期待が寄せられていることが明らかになりましたので、調査結果について簡単に報告します。
 
アンケート調査の経緯

 社会の多様化・成熟化により、価値観も大きく変容し、それに対応して 個人あるいは職業人として多角的な資質の向上がますます求められています。
 このような背景にたって、昨年、大学院委員会に生涯学習型夜間大学院専門委員会(委員長:辻秀典法学部教授)が設置され、個々人の自己実 現、能力の再開発等に資するとともに、人材育成を通して広く地域社会の発展に貢献することを目的とした「生涯学習型夜間大学院」構想について検討しております。その一環として、個人および事業所・団体を対象としてニーズ調査を行いました。その結果、夜間大学院について、地域から多大な期待が寄せられていることが明らかになりました。
 アンケート調査を通じて、生涯学習社会が確かな歩みで進行していることを実感するとともに、地域社会において大学が果たさなくてはならない役割について、改めて問い直す機会を頂いたと思います。



アンケート調査の実施

 調査に当たっては、主として広島市周辺地域から単純無作為に個人三一 三一人、事業所・団体四一八件を選び、郵送あるいは持参しました。回答は、個人一二八二人(四〇・九%)、事業所・団体一二三件(二九・四%)に達し、この種のアンケートとしては、他に類を見ないほど多くの方々からの反響がありました。
 調査項目は、個人宛では九問からなり、期待度、入学希望度、学習動機、希望学習分野、授業時間帯、大学・勤務先・行政への希望などについて質問しました。また、事業所・団体宛は十問からなり、現行の派遣制度、期待度、利用させたい学習分野・理由、利用者のために整備すべき条件・配慮などについて質問しました。
 なお、アンケート調査実施に際して、夜間大学院は、広島市中区の東千田キャンパスに設置され、応用文化論、応用人間発達学、応用社会論、応用情報処理学、応用社会環境医学の五分野から構成されることを想定して、回答をお願いしました。  


アンケート調査結果の概要

一.個人宛
 回答年齢層は、二十〜六十歳代まで、ほぼまんべんなく分布していますが、特に三十歳代から多くの回答が寄せられました。まず、構想に魅力を感じると回答した方が八九%もありました(図1)。また、入学希望については、事情が許せばという条件付きの方を含め六八%に達しました。また、前述のように回答年齢層は広く分布しており、継続的なニーズのあることが予想されます。

構想に対する感想(個人)
 希望学習内容を見ると、応用文化論、応用人間発達学、応用社会論、応用情報処理学、応用社会環境医学の五分野に対してほぼ均等の受講希望がありました。また、年齢別の希望学習内容を見ると、五十〜六十歳代では応用文化論、四十歳代は応用人間発達学、三十歳代は応用社会論、二十歳代は応用情報処理学および応用社会環境医学の各分野に対して特に高い関心が寄せられました。なお、業種と希望学習内容のクロス分析結果によれば、本構想は主婦も含めさまざまな業種の方々から、幅広く関心を寄せられていることも判明しました。
 これらのことから、本構想は、幅広い年齢層・業種の方々のニーズに応えうるものであることを示し、生涯学習時代にふさわしいものと考えられます。
 さらに、学習動機(複数回答)を見ると(図2)、「幅広い視野を身につけたいから」という方が全体の七割を超えており、より高い次元での教養的な学習内容を提供することが期待されています。また一方で、「職業人として、高度な専門性を身につけたいから」という方も、全体の四割を超えました。

学習動機(個人)
 実際の就学に際して、大学側へは選抜方法の柔軟化、勤務先へは就学のための時間的配慮等、行政へは経費に関する税制上の優遇、公的学資援助などの希望が寄せられています。
 自由記述の欄にも、多くの方々から熱い期待をこめたメッセージが寄せられており、本構想が地域住民から支持されていることが明らかになりました。


二.事業所・団体宛
 回答を頂いた事業所・団体の種別は、行政機関、社会福祉法人、教育機関、一般法人等多岐にわたっています。
 構想に関して利用する方向で検討したい、応援するとの回答が四七%、有益であり、本人の自由意思に任せるとの回答を加えると九一%に達しました(図3)。このことから、事業所・団体からも、夜間大学院設置に関して大きな期待が寄せられていることがわかります。

構想に対する感想(事業所・団体)
 利用させたい理由として、「職務に直接役立つ専門知識を得させたいから」が最も多く(六六%)、また「広い視野を身につけさせたいから」、「知的向上心を支援したいから」もそれぞれ五五%、四四%に達し、幅広い学習ニーズに応えることが期待されています(図4)。

利用させたい理由(事業所・団体)
 学習させたい分野に関しては、特に応用社会論、応用人間発達学、応用情報処理学の分野への希望が高いようです。
 利用者への具体的配慮として考えられる内容としては、時間的な配慮が最も多く、全体の八割強に達します。これは、個人が勤務先へ求める配慮の内容と一致しています。また、修了後、修得した専門的知識が活かせる部署等への配置転換も事業所・団体の二割弱が考えておられます。
 なお、キャンパスが通学に便利な場所であること、履修方法・時間帯の柔軟化、授業料等の負担軽減などの希望も寄せられており、設置に当たっては、こうした条件・環境の整備などが必要と思われます。

 このように、今回のアンケート調査結果から、夜間大学院の設置に関して、個人および事業所・団体双方から熱い期待が寄せられていることが判明しました。しかも、具体的な要望も多数寄せられ、本調査は今後の検討に際して非常に有意義な結果を得ることができたと思います。
 本調査の趣旨をご理解頂き、回答をお寄せ頂いた多くの方々に心から御礼申し上げる次第です。





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