学長インタビューNo.28

 好奇心と燃える情熱と探求心を! 

日時:平成10年10月5日(月)午後3時
場所:学長室


 今年6月と9月に外国出張されたロシア,ドイツおよびイタリア各国の大学訪問時の「帰国報告」,学長自ら主役として出演された市民オペラの様子など,本題以外の話を前置きに,今回は「広大生へのメッセージ」を伺いました。


自分の体をもっと大事に

広報委員=今期1、2号のインタビューでは、本学の教官に対する要望を語っていただきました。いい教官が良い教育をしていけば、良い学生ができ、広島大学全体の評価も高まる、というお話でしたが、今回はまず、現在の広大生に対する要望からお聞かせ下さい。

学長=まず第一に、「もっと自分の体を大事にせよ」ということをお願いしたい。とくに交通事故年間五十件のうち、死亡は五人ぐらいで、深夜一時から三時の間に集中している。生物としての人間のリズムからみて活動に適さない時間帯には、運転しないように。そして体を鍛え、健康を保つことをお願いしたい。
 二つ目は「四年間の大学生活で学力をつけよ」ということ。バブルが終わり、実力のない人は要らない、とされる時代になった。アルバイトで社会勉強を気取るよりも、社会に出るための勉強をみっちりしてほしい。資格を取っておくのもいいだろう。学生たちがそれぞれの専門分野に関する資格をとれるよう、大学としても何らかの支援体制を考えてゆかねばならない、と思っている。
 三つ目は「情熱を注ぎうる目標を持て」ということ。職業に限らず、自分はこれから先の人生で継続的に何をしたいかを模索し、その準備を学生時代にはじめて欲しい。私の本業は医者だが、趣味のオペラとヴァイオリンに、学生時代から数十年も取り組んでいる。そのことで、人生の楽しみと厚みがぐんと増したと思っている。



遊び上手・叱られ上手に!

広報委員=次に本号では、二十一世紀に向けての広大生に対して、社会人として活躍中の卒業生からのメッセージを特集しております。学長からも一言メッセージをお願いしたいのですが…。

学長=今の学生は、遊び方・叱られ方を知らない。一人遊びが多く、集団で遊べない。他人と衝突したり怒られたりするとすぐ、しょぼんとなって、もう駄目だとあきらめてしまう。
 好奇心と燃える情熱を持ち、「これがやりたい」「これに興味がある」と心から願う目標を定め、それを探求しつづける姿勢があれば、遊び上手・叱られ上手になれる。誰に何と言われようとびくともせず、心のリセプター(受容器)も常に開いておけるようになる。
 少々叱られてもへこたれず、にゅうっとどこからともなく再び顔を出してくる、図太さと茶目っ気を持とう。そういう人はまた、ストレスも溜め込まないし、「可愛げ」があって、周りを明るくする。そうやってどれだけ周囲の人を楽しくしたか、どれだけ他人の役に立ったか、という実績が多ければ多いほど、その人の人生は良い人生ではないか。そういう人が増えたら、社会は確実に良くなるだろう。
 これまで私は、広島大学のハード面を作ってきたが、これからは、こうしたソフト面を充実させるための足場を作っていきたい。それを二十一世紀の世代に受け継ぐのが私の役目だと思っている。


井上広報委員長

鈴木広報委員

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