大学生の本分 

文・西口千登志
中国電力(株)
人事労務部部長

人事システムの変革

 最初に、私自身の仕事について紹介させていただきます。
 私は、現在中国電力において人事業務に携わっていますが、公平・公正で納得性の高い人事を行うためにはどうしたらよいか、といった制度・運用のあり方について常に改善をしていくことが、私の主な仕事です。
 今や、わが国の社会・経済は、従来の枠組みが音をたてて崩れ大きな変革のうねりの中にあって、これまでの日本的経済の特徴といわれた終身雇用や年功序列制度などの人事システムについても盛んに見直しが行われており、当社も例外ではありません。
 特に、現在当社は電気料金の低廉化を目指して、会社をあげて効率化・変革に取り組んでおり、人事システムについてもプロジェクトグループを設置し、より活力の生まれるシステムづくりに向けて諸制度の見直しを行っているところです。さらなる能力主義・実力主義の促進、多様な人材の採用、高齢化時代を迎えて継続勤務のあり方、男女雇用機会均等の促進等々の課題に取り組んでいるところです。
 諸外国や他社の事例を参考にしながら自社の実状に即した諸制度をつくりあげていくことは、仲間とともに大変な苦労もしますが、成案を得て実施に移すことができたときの喜びはひとしおのものがあります。


企業が求める人材

 組織は、特定のタイプでなくさまざまなタイプの人の組み合わせによって活性化す るものであり、当社においても求める人材像を固定的に描いているのではなく、さまざまな人材を求めているところです。
 しかし、求める能力として共通的に言えることは、
(1)新しいことや、より高いレベルに積極的にチャレンジする気概をもっていること
(2)時代の変化に即応するためさまざまな制度を変革していく創造力があること
(3)全てのことを考える場合の基礎になる社会、経済に関する幅広い常識をもっていること、などが挙げられます。
 そして、消極的、暗い、融通がきかないといったタイプは、まず敬遠されると思って間違いないでしょう。
 参考までに、上場企業百社の社長が自分のブレーンとして求めたい幕末の人材についてのアンケートを紹介しますと、行動力、チャレンジ意欲旺盛な坂本竜馬が断然トップであり、以下、行動する知識人、合理主義者であった福沢諭吉、時代を先取りする勝海舟、大局観と決断力に優れた西郷隆盛と続き、精密であるが冷酷さのある大久保利通、寡黙で慎重居士の桂小五郎が最下位グループに名を連ねています。  


大学生に期待すること

 私は、職業柄、採用試験で学生と面接することが多いのですが、その中で感じることは、学生時代に将来こういう仕事に就きたいからこういう勉強に力を入れようとか、資格を取得しようといった目標を持っている人が以外に少ないように感じます。人間、目標を持ってそれに向かって努力するのか、そうでないかによって同じ四年間の大学生活の間にずいぶん大きな差がつくものです。ぜひ、目標を高く掲げて努力していただきたいと思います。
 高校時代までは与えられる学習でしたが、大学時代は求める学習であり、自らが選択し積極的に自分自身を磨いていくことが期待されているのです。人生において、大学時代は自己研鑽に専念できる貴重な時期です。社会に出てからも勉強しなければならないことは山ほどありますが、仕事をしながらであり、なかなか時間が取れないのが実状であります。そこで、私自身の反省も踏まえ、学生の皆さん方に申し上げたいことは、卒業時には、自分はこんなに充実した大学生活を送ったのだということを、具体的に胸を張って言えるようになっていただいきたいということです。
 中国地方の大学の雄として期待している広島大学から最近中国電力へ入社される学生は、少し特徴に乏しいような感じがしています。元気印の学生、発想豊かな学生などユニークで存在感のある学生を大いに期待しております。

プロフィール
(にしぐち・ちとし)
◇一九四四年六月 山口県生まれ
◇一九六七年三月  広島大学政経学部卒業
◇一九六七年四月 中国電力株式会社入社                  
◇一九八七年二月 同社東京支社総務課長
◇一九八九年二月 同社社長室人事担当課長
◇一九九三年二月 同社下関営業所長
◇一九九七年六月 同社人事労務部部長




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