『二十一世紀の広島大学像』 


 三十期四号でお知らせした、十月二十日の臨時部局長連絡会議における学長からの提案「本学の将来計画の策定に当たっての基本的な考え方」の全文は次のとおりである。
 これは、学長のもとに置かれていた「大学審議会答申への対策研究会」からの「次世紀に向けた広島大学の更なる改革への提言」を受けて提案されたものである。
 学長からは、この提言の内容について、「大学審議会の答申を視野に入れたうえで、本学がこれまでに取り組んできた改革をもとに今後さらに取り組むべき改革について言及されており、非常に重要な問題として認識している」との発言があり、さらに、この提案を進めるに当たっては「構成員の意識改革また各部局あるいは構成員一人ひとりにいろいろな意味で覚悟がいるということをぜひご理解いただきたい」との説明があった。
 現在、学長の提案を受けて「二十一世紀の広島大学像マスタープラン策定部会」では鋭意検討が続けられており、来年一月を目途に策定案が出される予定となっている。


 本学の将来計画の策定に当たっての
基本的な考え方 


広島大学長 原田 康夫
平成十年十月二十日


 統合移転を終えた本学は、総合大学としてその知的資源を最大限に発揮し、新しい学問を創造し、世界に開かれた大学として、大学の理念の実現に向け、将来にわたって発展し続けることが求められている。
しかし、現下の厳しい行財政事情の中で、国立大学は、あらためて、その社会的役割と責任とを問われ、公的資金の投入価値のある大学へ向けての再構築が強く求められている。
いまこそ本学は、社会に開かれた大学、競争的環境に打ち勝てる大学、個性豊かな大学への脱皮をめざし、旧来の陋習にこだわることなく、新たに将来を見据えた望ましい大学像を打ち立て、具体的な達成目標を構成員全体で共有し、それに向かっての改革・改善を果敢に実行することが重要である。
大学の自治は決して所与のものではない。人類の未来と社会の発展に寄与しようという構成員の揺るぎない意志と努力によって保障され、社会の信頼によって支えられてきたものである。このことを肝に銘じ、新しい時代に生きる大学の構成員として、今、われわれは何をなすべきか、何ができるかを、真剣に考えていただきたい。
以下に示す三つは、これからの本学改革に当たっての基本的な考え方を示したものであり、この考え方に沿った広島大学像のマスタープランを構築していきたい。二十一世紀の広島大学の創造に向けて、構成員諸氏のご理解とご協力をお願いしたい。

一.学部教育と大学院教育との相対的な役割の分化を図りながら、新しい時代に対応した大学院の整備・充実と教養的教育のさらなる充実を含む学部教育の抜本的改革をめざす。
二.真の総合大学をめざして、学部・研究科間相互の交流推進による教育研究の活性化及び専門深化を図るとともに新しい学問領域を開拓・発展させる。
三.開かれた大学を実現するため、大学情報の公開を推進し、地域社会・国際社会とのネットワークを構築して、知的情報の創造と発信機能を充実させる。




広大フォーラム30期5号 目次に戻る