広島大学における教員の任期制について
文・鎌田 七男
(Kamada, Nanao)
大学教員の任期制検討小委員会委員長
「大学の教員等の任期に関する法律」(以下「法律」という)の施行を受けて、本学でも平成九年十二月十六日の評議会において、学長提案の「大学教員の任期制検討小委員会」(以下「委員会」という)の設置が承認され、広島大学としての任期制のあり方について検討が行われています。
委員会では、法律の目的とするところは、あくまで大学の教育研究の活性化にあることを認識し、最初から任期制の導入を目的として論議するのではなく、広く、本学のさらなる活性化方策を探ることを目的として、慎重な討議を行いました。
最初に、本学における教育研究の現状と問題点として、(1)教員人事による活性化、(2)業績評価の徹底による活性化、(3)大学間交流を機軸にした活性化、(4)待遇改善に基づく活性化を取り上げ検討しました。次に、任期制の導入の是非について、法律でいう任期制の内容が、本学の活性化方策の一つに位置づけられるか、導入によってもたらされることが予想されるメリット、デメリット等、任期制の導入に対する賛否意見を出し合い、検討した結果、教員採用の環境が、それぞれの分野で異なっており、必ずしも統一的な採用条件を設定することが難しいことを認識しました。
その結果、任期制を導入するメリットがあり、教育研究の活性化に繋がる部署・職種において、選択的に任期制を導入することが望ましい、との考えに至りました。また、導入する際に、予想される問題を十分に検討する必要があるとの認識に立ち、問題点とその対応として、(1)優遇措置、(2)業績評価、(3)任期制の適用、(4)任期満了時の対応、(5)他大学との連携、(6)企業との連携について討議しました。
特に、(3)任期制の適用については、どの部署、どの職種等に任期制を適用するか、種々検討した結果、導入する部署・職種・任期・再任条件等については、各部局等において慎重に検討することが必要である、と判断しました。
委員会におけるこれらの検討結果を「大学教員の任期制について─広島大学の活性化を目指して─」答申(案)としてまとめ、本年九月七日の部局長連絡会議に提出され、各部局等において持ち帰りの上、検討されることになりました。その結果、「任期制導入の根拠が必ずしも明確でない」、「全学的議論の場が必要」等の意見が提出され、十月十三日の部局長連絡会議で、各部局等の意見をもとに、委員会でさらに検討することになりました。
委員会では、各部局等の意見を真摯に受け止め、答申(案)の一部修正も視野に入れながら検討し、回答を行いました。今後、修正された答申(案)については、各部局等での議論を踏まえ、部局長連絡会議で議論ののち、評議会に付議されます。評議会で承認いただければ、本学における任期制に関する基本的事項(総論部分)の検討が終了し、委員会の任務は終了します。これからの検討順序としては、図に示しているような、任期制連絡会(仮称)が、各部局間の連絡調整、任期制に関する規則(案)の作成等を行うことになると想定しております。
最後に、本学の教育研究の活性化に向けて、われわれ教員の手による、業績評価を含めた形での、選択的任期制導入という委員会の判断が、構成員の皆様から、ご理解、ご支持いただけることを願っております。
コラム
法律でいう任期制は、すべての教員ポストに一律に任期を付すということではなく、いわゆる「選択的任期制」という考え方をとっている。
すなわち、具体的な任期制の実施を各大学に委ねているのであって、任期制を導入するかどうかはもとより、どの職に任期を付すのか、どの程度の期間にするのかについても、各大学における判断によることとなっている。
広大フォーラム30期5号
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