「隣の芝は青い」ではなく,真摯な選択を!  
学内流動化促進への取り組み ─教育学部の場合─

坂手 照憲(Sakate, Terutoshi)
教育学部教務委員会委員長
酒井 弘(Sakai, Hiromu)   
広報委員



 坂手学部教務委員会委員長に、転学部を希望する学生への具体的アドヴァイスを中心に、教育学部における流動化への取り組みについて質問した。


Q1:流動化促進は学部の活性化につながるのでしょうか?

 今回の流動化促進の趣旨は、学生の真摯な進路変更に対応しようとするためなので、直接、即効的に本学部の活性化につながるとは思われない。しかし、学生が他へ転出したいと思う一因が、当該学科(専修)に存在しており、しかもそれが一般性のある問題点として認められる場合には、その改善が図られることで、間接的に活性化の一助となり得るであろう。
 つまり、最上位の目標とすべきかどうかは疑問であるが、当該学科(専修)、ひいては本学部の学生が、他へ転出したいと思わないところであり、他学部の学生からは、転学部したいと思われるようなところでありたいと努めることは、魅力ある活性化した学部につながる可能性の一つであると思う。


Q2:転学部希望者への具体的な指導についてお聞かせください。

 学生が転学部を希望したからといって、ただちに転学部の書類作成を開始すべきではないだろう。最低限次のような手続きが行われた結果、転学部した方が適切であるとの判断があれば、そのような手続きを開始することになる。
 (1)学生が転学部を希望する真意について確認する。(2)その学生にとって、その希望先が本当に適切であるかどうか判断する。(3)その希望先が受け入れ可能かどうかを検討する。
 (1)については、説明不要とも思うが、チューター・指導教官は、学生の就学状況などについて、常日頃から把握に努めておられると思うので、学生の申し出がどのようなところに由来するかは、判断がつくと思われる。この制度の趣旨が正当に活かされるためにも、誤りのない判断が必要となる。
 (2)については「隣の芝は青い」というのではなく、志願先学部のカリキュラム、卒業後の進路などについて、実状をよく把握した上での判断であるべきだろう。
 (3)については、ご承知のように今回は「欠員条項」は削除されたが、許容数の上限がある。この人数については公表(公示)されないことになるが、それぞれのところ(志願先)で、何人程度の志願者を受け入れ可能であるかが、把握されているはずですので、その状況を問い合わせるのがよいだろう。
 転学部の出願をすれば、必ずこれが叶うとは限らない。例えば、先方の選考基準をクリアーできなかった場合とか、クリアーできたとしても順位的に許容人数外の場合などは、転学部を受け入れてはもらえない。この辺りの判断も、指導の過程では重要になってくると思う。
 この他に、転学部について家族の了承を得ているか、卒業が遅れる場合があることや原則として二度と転学部の願い出はできないことを認識しているかなども、チューターが確認しておくあるいは学生に周知させておくことが大切である。


Q3:教育学部に転入を希望する学生へ何かアドヴァイスがありますか?

 「天は自ら行動しない者には救いの手をさしのべない」という言葉があるが、どの学部の学生であっても、上記の過程を踏まえて欲しい。つまり、"The grass is always greener"ではなく、真摯な選択として「教育学部」を選んだのであれば、「その挑戦に幸いあれ」 である。


Q4:流動化促進と将来の学部教育の関係についてコメントをお願いします。

 資料で見ると、我が国の主要国立大学で、全学的に流動化を図っているところは見あたらず、その意味で本学は先進的な規定に改めたといえる。
 先般、「大学審議会」の答申として、「出にくい大学」への転換を図ることが報道されていた。これは、早ければ二〇〇〇年四月の入学生からの実施ともあったが、本学が近くこれを実施するのであれば、その結果「出にくい学部」と「出やすい学部」ができないか。それが「転学部志願」へ影響しないかの検討も必要になるかもしれない。
 同じく答申によれば、来年度から大学間での単位互換の上限が、六十単位まで拡大されるということだし、我が国でも徐々に、学部間はいうに及ばず大学間においても流動性が広がる方向にあると思われる。しかし、米国のように大学・学部を移るのが容易になるには、まだまだ時間がかかるのではないだろうか。



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