医学部における学内流動化と転学部の考え 

文・碓井 亞(Usui, Tsuguru)
医学部広報委員

 医学部においては、医学医療の実践者にふさわしい豊かな人間性と、幅広い教養を身に付け、専門職業として必要な基礎的知識、技能、態度を習得し、さらに科学的思考力と創造性に富む人材を育成することを学部教育の理念としている。
 医学部は、医学科、総合薬学科、保健学科の三学科よりなり、学科によりそれぞれ異なった事情を有しているので、三学科別にそれぞれの項目に分けて述べることにする。


医学科

 医学科では、医学以外の幅広い多様な学問にも触れ、多様な文化・価値観を学ぶとともに、医学・医療の国際化、情報化に対応して、外国語の運用能力と情報処理能力を身に付け、医学・医療の基礎的及び応用的な研究の発展に寄与できる柔軟な発想と創造性を養い、医学・医療における諸事情を適切に分析・評価し、問題点を解決する能力を身に付けるとともに、現場での実習を通じて、医師としての基本的な診療能力を身に付けること、また、生涯にわたって学習する習慣を養うことを教育目標としている。
 履修目標としては、医学科卒業要件単位数(計一九〇単位以上)の全てを履修し、合格することとし、教育内容(教授教育方法)については、教育目標に適う講義と実習を行い、専門教育における講義、実習は各領域ごとに講座の特性を生かし、講座の教官が担当し、各講座間の連携を密にし、効率的な講義、実習のカリキュラムを編成している。
 したがって、転学部および編入学については、医学科では実技習得のための実習の占める比率が高く、履修科目のほとんどが必修科目であり、かつ順を追って履修、すなわちある科目を履修した後に次の科目が理解可能となる学問、つまり箱形の積み重ね式であることから、現段階では途中編入については、実際上理想的な教育改革にはつながらない。


総合薬学科

 薬学の社会的使命は有用な医薬品の創製、供給、適正使用などを遂行できる人を養成することにある。したがって、総合薬学科では、生命科学及び創薬に関わる基礎・応用から、医療や保健衛生関連領域にいたる広範な分野の学問を学ぶ。 
 その課程で、(1)自己の技量を十二分に発揮できる能力を身に付けさせる、(2)自ら学習する態度を身に付けさせる、(3)将来、薬剤師としての倫理観、自覚をもたせる、そして(4)卒業生全員の薬剤師国家試験合格、などを教育目標にしている。
 卒業後は、病院・薬局などの医療現場、保健衛生関連機関、製薬企業などへ就職し、研究・学術関連などで活躍する。あるいは大学院に進み、薬学関連領域の高級技術者、あるいは高度研究者になることを目指す。
 四年次の卒業実習において、各研究室に配属され、きめ細かな学習及び研究指導を受けることにしている。教育内容としては、基礎学問の会得に重点を置いているので、物理化学、有機化学、生化学や生理学などの基礎科目には、講義のほかに演習の時間を設け徹底的に鍛えることにしている。
 その他の専門科目においても、科目間相互及び医薬との関連を十二分に理解させることにしている。実験実習、病院実習などを充実させ、講義以外の修得しがたい研究・病院実務の実際面を理解させるなどを教育方針としている。
 転学部及び編入学については、薬学科は卒業時に薬剤師国家試験があるために、修得科目単位の制約があり、二年次以降の転学部及び編入は事実上不可能である。しかし、一年次から二年次へ進級する時点では受け入れ可能であり、志豊かな学生は許される限り受け入れる。


保健学科

 保健学科では、医療職国家試験に合格できる能力と、確かな倫理観を備えた人材育成をすることが学科教育目標である。
 履修目標としては、社会に対して卒業生個人の品格の保障をはかる必要があり、「安易な単位認定はしない」方針をとっている。すなわち、一定の基準に達しない学生には臨床実習に進ませないなどの方針をとっている。不本意な進路選択によって入学し、学業に専念できない者を引き留めない。
 教育内容としては、自立できる職業人を育成するために、講義偏重は避け、自己学習の習慣化やコミュニケーション能力の育成を図る。このため、授業に宿題発表やグループ討議を取り入れている。
 ただし、学部教育においては、最低限の知識、技術の伝達を確保するため、相当量の講義を欠くことはできない。また、ある程度そろえた、すなわち、箱形の教育にならざるを得ない。転学部及び編入学については、医療短大卒業者を対象にした三年次編入学の定員枠を設けているが、今後よりよい制度への転換の可能性を検討していく必要がある。



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