留学生の眼(68)

  ペルーの助産婦 いま、広大院生  

文 写真・ ルルデス・ロサリオ・エレーラ
医学系研究科博士課程後期1年(ペルー・リマ市出身)


 私は地球の裏側のリマから、二十二時間飛行機に揺られ初めて日本に着いたのが、三年前です。その時から、日本の印象をまとめようといろいろなことに興味を持ち続けてきました。
 日本について多くの友人から「食べ物がマズイ」とか、「日本人と友だちになれない」とか、「日本語は難しくて覚えられない」とかいろいろなことを聞いていましたが、そうではありませんでした。

すばらしい公衆衛生

 私は医学部保健学科の小児保健学・看護学田中義人先生と臨床看護学の梯正之先生より研究指導を受けています。修士課程を修了し、一九九八年の四月から博士課程の一年生で、今、花の三十一歳です。ペルーの首都リマにあるSan Marcos大学で五年間勉強し卒業し、助産婦として病院で働くかたわら、個人的に助産院を開業し産児制限やAIDS等を助言してきました。
 来日当時は、ほんの一年半くらいしか日本に居るつもりはありませんでした。「あなたは、なんで日本を選んだの」といろいろな友人に聞かれます。その答えは次の通りです。日本の母子健康基準は素晴らしく、また、日本はもの凄いお金持ちや貧乏な人が極端に多くないために、先進国の中でもアメリカやイギリスと比べ乳幼児の死亡率が極端に少ないこと、母性保護法や避妊具による産児制限が非常にうまくいっていることなどにびっくりしました。
 日本人の健康基準は毎年着実に向上しています。個人個人が健康に気をつけていて、プライマリーケア等が徹底しているからだと思いました。このようなすばらしい日本の公衆衛生に学びたいと思います。また反面、日本が抱えている少子化や高齢化さらに「いじめ」等の問題にも、興味を持ち続けています。


旅行が大好き

 東広島キャンパスで日本語を勉強した最初の六か月間は、自転車の乗り方や料理の作り方、五大陸から来ている留学生に友人知人の作り方などを学び、新しい生活に慣れるための楽しい時を過ごしました。
 世界の中には学ぶべき多くのものがあります。ナスカの地上絵、マチュピチュの古代遺跡やアマゾンの密林等、よくご存知でしょうが、これが私の美しい国です。各国から来ている留学生を通して知ったいろいろな国にも、それぞれ美しさがあります。当然ながら日本も大変美しい国です。
 旅行するのが大好きな私は「青春18切符」を使い、機会さえあればいつでも汽車に乗り、北海道、青森、日光、東京、長崎といろいろな場所へ旅をしています。もちろん穏やかな広島は私の好きな場所の一つです。
 旅をしてしると日本各地で親切な人々に出会います。全くまたはほとんど日本語が話せなくても、日本人は大変親切です。私の腕を取り目的地まで連れて行ってくれた人がいたことや、冬の寒い日に汽車を待っていると「何かお手伝いしましょうか」とか、「熱いコーヒはいりませんか」と尋ねて下さった人がいたことなどを思い出します。


もっと日本を理解したい
 リマは海に面していますので魚が豊富です。私たちは生魚にレモンをかけニンニクと塩・胡椒で味付けをして食べます。主食は米ですが、油やニンニク等を加えて料理していますので日本とは異なります。塩味にした豆や、砂糖で料理した豆をデザートとして食べます。ジャガイモもたくさんの種類があります。野菜よりも肉を多く食べ、牛肉、豚肉、家兎、鶏肉、七面鳥等を食べます。
 このようなわけで日本料理に慣れるにはなにも問題はありませんでした。今では、ソーメン、ワサビ抜きのお刺身やお寿司、煮物などの日本の料理が大好きです。もちろん自分で料理をし、それを食べることも好きです。
 日本語が自由に使えなかった時の大学生活は非常に不便でした。級友は私と英語で話すことを、恥ずかしかったり怖がったりしていました。英語が母国語でない私も皆さんと同様に英語を話すことが怖いのです。
 日本語は大変難しいのですが、なんとか学んでいます。人とのコミュニケーションのためにも、勉強のためにも言葉が大切であることが段々とわかってきました。クラスの友だちに助けられながら、もっと日本語を勉強し研究を続けていき、もっと日本を理解したいと思っています。




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