五十年史編集室だより(5) 


 広大フォーラム学外読者アンケート報告 



アンケート調査実施の概要 
 五十年史編集室では、『広島大学五十年史』(以下『五十年史』)の編纂事業に取り組んでいます。現在は学内に所蔵する資料の把握につとめています。大学という大きな組織の歴史を五十年間にわたって記述するためには、学内所蔵の公的資料のみでは十分とはいえません。とくに広島大学の場合は、創立期における分散キャンパスの統廃合や、近年の東広島市への統合移転など、資料保存の上では好ましくない歴史を経験しており、学内所蔵の資料自体にも『五十年史』編纂の基礎資料としては限界があります。
 そこで昨年七月、『広大フォーラム』学外読者のうち、名誉教授と旧職員を中心とする七一四名の皆様に対し、「『広島大学五十年史』編集のための資料・情報調査」と題するアンケートに御協力をお願いしました。
 このアンケートは前述の学内所蔵資料の補完をめざしていることは勿論、個人が所蔵する貴重な資料について把握させて頂くことも目的のひとつとしていました。それは回顧録、講義録、サークル等が発行した冊子類、写真・アルバム類、記念品、個人の日記やメモといった資料は、学内所蔵資料では把握しきれない大学の姿を物語る、編纂事業を進める上では非常に貴重な資料だといえるからです。


調査項目について
 調査項目は、資料の所蔵に関する質問七項目と、その他の質問三項目とで構成しました。資料の所蔵については、(一)公的文書、(二)広島大学及び包括各校関係者が刊行した回顧録の類、(三)広島大学在職中の講義録・出席簿・成績簿・事務記録・日誌の類、(四)広島大学諸機関発行の冊子、パンフレット、ビラの類、(五)広島大学及び包括各校に関係する写真、フィルム、絵画、図版、録音テープ等、(六)広島大学及び包括各校に関係する物品資料、(七)その他、という項目について資料の有無をうかがいました。
 その他の質問としては、「在職中最も記憶に残る事項、及び広島大学史を編纂する上で不可欠であると思われる事項」や「『五十年史』編纂への期待・要望」といったことについて、自由記述欄を設けました。また、「資料を所蔵していると思われる方の連絡先」についてもうかがいました。


アンケートの回収状況
 七一四名中、一四一名の皆様より回答を頂きました。回答者の関係部局の内訳は次のとおりでした。
総合科学部(12)教養部(なし)文学部(11)教育学部(9)福山分校(3)学校教育学部(9)東雲分校(1)法学部(2)経済学部(3)政経学部(2)理学部(10)医学部(10)歯学部(4)工学部(13)生物生産学部(4)水畜産学部(2)理論研(1)原医研(2)教職員計(99)その他(事務職等)(42)  なお、アンケート回答時に資料を同封してくださった方もいらっしゃいました(表参照)。
 現在、この調査結果をもとに、資料の取扱について御相談をさせていただいております。ただし、今年十一月に図説年表を発行することから、これに用いる写真資料等の収集を優先させて頂いております。このため、未だに御連絡できずにいる方もいらっしゃいます。この場を借りてお詫び申し上げます。特に資料提供をお急ぎの場合は御連絡ください。できる限り迅速に対応させていただきます。
 なお、すでに資料を御寄贈くださった方もいらっしゃいますが、紙面の都合により今回御報告できませんでしたことをお断り致します。
 今後は各同窓会組織に御協力を仰ぎ、卒業生の皆様に対しても、今回と同様のアンケートをお願いすることを企画しております。すでにお手先に届いている方もいらっしゃることと存じます。皆様の御協力を、お願い申し上げます。
 広島大学に関連する資料や情報をお持ちの方は、当編集室までお知らせください。


アンケート時にいただいた資料一覧(敬称略)
浅川末三 「一般教育に関する「中間案」についての意見(案)」(S43). 「教職員組織」(S45). 「広島大学水畜産学部学生委員会規程」(S47).学生代表団より水畜産学部教授会宛授業料値上げに関する意見書1通
在川龍記 雑賀忠義(雅号:南山)筆碑文色紙(「安らかに眠って下さい過ちは繰り返しませぬから」)複写. 原本は大学での保存態勢整備を条件に寄贈の以降
片岡徳雄 片岡徳雄「退官教官から 選ばれた土地」複写(広島大学教育学部広報委員会『かがみ通信』4巻3号(No.19). 1994年2月).
高岡 聖 ひろしま郷土史研究会『ふるさとひろしま』第14号、1988年
増田芽子 東雲祭写真1点、「広島大学新聞62号」1984年4月8日
水戸滋夫 昭和30年代の東千田キャンパスの写真4点
村上一郎 広島化学同窓会『広島大学理学部化学教室創設五十周年記念誌』1979年
森岡祐二 森岡祐二「特集・戦争と図書館資料 広島の原爆と被災図書」複写(『図書館雑誌』vol.70, No.8,1980年8月).
守 康則 『学生便覧 昭和52年度 広島大学教育学部福山分校』


 大学史の散歩道 
  歴史をたどる学生たち
 1998年11月8日,法学部・経済学部夜間主コースの大学祭である森戸祭に参加した。会場の広島市東千田公園は,同時に開かれていた千田わっしょい祭への参加者も含めて,大勢の人々で賑わっていた。被爆建築物である旧理学部1号館の前にしつらえられた仮設ステージ上で繰り広げられる企画の数々が,幅広い年齢層の市民に見守られている光景には本当に微笑ましいものがあった。
 90年代に入ってからの夜間主コースの学生たちは,統合・移転事業の余波としわ寄せを大きく被ってきた。大学祭も例外ではなく,93年の第1回千田祭以来,地域に密着する内容作りが模索され続けてきたのである。
 企画の一つに,「森戸クイズ」があった。祭に冠した「森戸」という名前を糸口にして,政経学部以来の歴史をたどり,今,自らが置かれている歴史的位置を探りたいという学生たちの気持ちがこうした企画を実らせたのだろう。明治の広島県令・千田貞暁にちなんで名付けられた東千田町で,初代学長・森戸辰男にちなんで名付けられた大学祭が開かれるという不思議さを味わいながらの森戸祭見学であった。
(三澤 純)

この日,森戸祭会場の東千田公園には約4万人の市民が集った。「市民の中の大学祭」というスタイルは全国的に見てもユニークなものではないだろうか。
 
50年史編集室ホームページ http://www.ipc.hiroshima-u.ac.jp/~nenshi50/

業務日誌抄録

12・16 医学資料館資料調査(宇吹幹事・三澤)。
12・18 全国大学史資料協議会西日本部会出張(小宮山)。
 鳴海元名誉教授(理学部)所蔵写真を一時借用。
12・24 信井正行氏(広島ユネスコ協会会長)来室。
12・28 ペスタロッチー教育賞表彰式(黒柳徹子氏授賞)取材。
1・7 講演会『産学連携』を取材(小宮山)。
1・12  部局資料調査(附属図書館)。附属図書館所蔵写真・資料を借用。
1・14 第三回編集会議。
1・16〜17 大学入試センター試験取材(契約カメラマン及び小宮山)。
1・18 大森富子氏(医学部広仁会)来室。資料四点を貸出。
1・20 広島大学HIV/AIDS予防対策セミナー『エイズ・メモリアル・キルト展』取材(三澤・小宮山)。
1・22 第四回編集会議。
1・23 理学部数学科『'99高校生のための現代数学入門』講座取材(三澤)。
1・26 中国新聞社広島本社にて資料調査(三澤・小宮山)。
 柿谷悟名誉教授(理学部)より資料受贈。
1・28 医学資料館にて資料調査(三澤・小宮山)。
1・29 第五回編集会議。
2・1 石田寛名誉教授(文学部)より資料に関する問合せ。
2・3 医学資料館写真パネルの接写及び東広島キャンパス内の雪の風景写真撮影(契約カメラマン及び三澤・小宮山)。
2・4 附属図書館内の写真撮影(契約カメラマン)。
2・5 第六回編集会議。
2・15 RCC中国放送にて資料調査(小池幹事・小宮山)
2・19 第四回研究会。
報告…折田悦郎氏(九州大学史料室)「大学史編纂と資料収集・保存のあり方について」



〈連絡先〉50年史編集室 電話 0824(24)6050 FAX 0824(24)6049
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