広島大学5原則

広島大学長 原田 康夫




 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。難関をくぐりぬけ、初志貫徹して合格の栄誉を得られましたこと誠におめでとうございます。広島大学を代表して心からお慶びと歓迎の意を表します。また今日まで諸君を支えてこられた御家族の皆様に心からお祝いを申し上げます。
 皆さんはちょうど広島大学創立五十周年の年に入学されました。広島大学は昭和二十四年、新制大学として、それまであった広島文理科大学を中心として、広島高等学校、広島工業専門学校、その他の高等教育機関が集まって、広島大学となりました。
 初代学長森戸辰男先生は、戦後すぐの文部大臣として、戦争で荒廃した日本に新しい教育制度を確立され、その後広島大学学長として昭和二十四年から大学の復興につくされました。当時の森戸学長の建学の理念は、平和で一つの大学、中国四国地区の中心的大学、国際性のある大学ということでありました。
 それから五十年、広島大学は社会的変遷の中でも大きく発展し、二年前には二十四年間かかった統合移転を終え、日本一広くまた日本一整備されたキャンパスになりました。その上、森戸学長の建学の理念は達成され、新たなる理念でもって、二十一世紀に臨もうとしています。
 すなわち、平和を希求する精神、新たなる知の創造、豊かな人間性を培う教育、地域社会・国際社会との共存、絶えざる自己変革の五原則であります。
 広島は二十一世紀になりましても世界の平和の原点です。皆さんは原爆の廃墟から今日の姿へ五十年かけて発展してきた広島大学で勉強するのです。いかに世界平和が人類のため、世界のため、地球のために必要かを学習していただきたいと思います。
 広島大学は昨年大学院先端物質科学研究科より重点化が始まり、本年は理学部も重点化となり、大学院大学として新たな発展が約束されました。広島大学は、まさに二十一世紀には、日本を代表する大学ということになります。皆さんには我が広島大学で、二十一世紀に向けて新たなる知の創造をする基礎をつくっていただきたく思っています。
 皆さんはまさに世紀末の入学生でありますが、皆さんが活躍する二十一世紀は、二十世紀以上に激動の世紀になると思います。こういう時代への心構えは、「平常心」で慌てず、一呼吸おいて、淡々とした気持ちで物事に対処できる心を養わねばなりません。情報に一喜一憂することなく、平常心で、物事の奥にあるものを洞察することのできる力をつけることです。
 そして、自分が「これだ」と思うような学問、趣味、興味のあることをこの大学生活で見つけて下さい。そうすれば自然に長年継続して求めることができるものです。そして、人間だけでなく万物をいつくしむという豊かな人間性を養って下さい。さらに、文化人として将来、豊かな心をもつことのできる一芸一能をもつことも皆さんを成長させるものと思います。
 大学は自分の頭で考え、疑問があれば自ら解決を見出す能力を養うところです。今までのように単に覚えて試験にのぞめばよいというのとは根本的に異なります。疑問の解決の手助けや道を求める人たちに助言できる多くの優秀な師となる人も我が大学にはそろっています。友と師をみつけるのも大学です。
 その上、広島大学には、六七○名の留学生が世界五十九か国より留学しています。この人たちと皆さんは、身近に話しあい、また他国の習慣・言葉なども学ぶことができます。この広島大学で国際性を養い、国際社会での大きな活躍のできる人間に成長して下さい。そのためにも、語学・情報の学習のできる設備も整えています。
 どうか、この大学生活を通して、自分の進むべき道を求め、高い志をもち、それを求めて邁進して下さい。広島大学での生活が楽しく、しかも有意義であることを祈って、私の祝詞といたします。



 



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