平成11年4月1日からの新副学長に,生和総合科学部長と牟田理学部長が指名された。
原田学長の残る2年の任期を補佐し、本学の21世紀の将来構想に基づいた改革がより推進されるよう,お二人の新副学長への期待は大きい。
雲の峰幾つ崩れて月の山
文・生 和 秀 敏(Seiwa, Hidetoshi)
雲の峰幾つ崩れて月の山。このところ、奥の細道のなかのこの一句がこころに浮かぶようになった。次々と雲が沸き立ち、目指す山は一向に見えない、一体、いつになったら、すっきりとした山容を伺うことができるのだろうか。
わびさびの境地とはほど遠い私が、この句にこころを惹かれる理由の一つは、多分、大学設置基準大綱化後の大学の将来像について、模索しながらも、それを明確にできないもどかしさを感じているからであろう。
こんな時には、ベートーヴェンを聴くことにしている。とりわけ、ショルティ指揮のシカゴ交響楽団の演奏がいい。テンポが速く、爽やかで切れ味の鋭い演奏を聴いていると、精神的な疲労感が次第に薄れ、気分一新、やがて、再び気力が湧き出てくるから不思議である。
温泉に浸かるとか、釣りを楽しむとか、気分転換の方法は、人によってさまざまであろうが、私にとってショルティの音楽は、有能感を回復するには格別の効用があるようだ。
しかし、いくら気分が変わっても、所詮、それは一過性の効果であって、大学の置かれている現代的状況に変化がない限り、ストレス状況から完全に脱皮することは不可能であろう。
今後も、さまざまな情報に振り回されながら、試行錯誤を繰り返す日々が続くことは覚悟しなければならない。これを徒労と見るか、新しい時代を切り開くための挑戦的試みと見るかは、いずれ雲の峰は必ず崩れ去り、月光に照らされた山頂がくっきりと浮かび上がるはずだという揺るぎない信念のあるなしにかかっている。
学長を支え、二年間、何とか頑張ってみようと思っている。ご協力をお願いしたい。
はからずも・・・
文・牟 田 泰 三(Muta, Taizo)
「はからずも副学長という大役を仰せつかり・・・」と書きそうになり、「はからずも・・・」とやって失笑を買っている新任大臣を思いだして、あわててやめましたが、正直なところこの言葉がぴったりの心境です。原田学長をしっかりと補佐して、学内調整を図りながら改革を推し進めていくことがどのくらいできるのか、不安も多いのですが、私なりに生和先生と協力しながら精一杯努力をしてみたいと思っております。よろしく御願いいたします。
私は、日ごろよく理学部の先生方に、「五十歳までは教育研究に全力投球して優れた業績を上げて下さい。でも、五十歳を過ぎたら、これまで自由に研究をさせてくれた大学のために働いて下さい(委員会など大学全体のための仕事もして下さい)」と言っています。何も五十歳できっちりと区切るわけではありませんが、およそ五十歳ぐらいで研究のめどが立つだろうから、それから先は大学に恩返しをする番ですよ、と言っているつもりなのです。
このことをご理解いただいて、大学全体の運営のために貢献していただける方が一人でも多くなれば、運営もスムーズになり、大学の発展の基礎が固められるのではないかと思います。
考えてみれば、この言葉はそっくりそのまま、いまの自分自身に言い聞かせるべき言葉でもあります。私的立場を離れて、大学全体の観点から大学運営に貢献することができるよう、努力を重ねるべきだと思っています。
日本では十八歳人口が減少を続け、大学淘汰の時代を迎えています。このような中で、広島大学は、開学以来の大きな発展期を迎えているように思われます。特に近年、学長のご指導の下に、学内設備が格段に充実され、学内の改革も進められています。これからは、教育研究の実績を積み上げるべき時です。多くの構成員の方々と協力しながら、このための学内整備に微力を尽くしたいと思います。
広大フォーラム30期8号 目次に戻る