総合科学部

学問を楽しもう

総合科学部長 江口 正晃




 ながい間の努力を実らせ本学部へ入学された新入生の皆さん、本当におめでとう。合格の喜びとともに、希望で胸を膨らませていることと思う。自分自身の努力の結果勝ち得たものであることに自信を持ってほしい。しかし同時に、ご家族をはじめとする周囲の人々の愛に育まれてようやくここまでこれたこと、自分は自分一人のものではないことを心に強く刻み、これらの人々への深い感謝の念を忘れないでいただきたい。
 大学は学問や課外活動を通じて自らの生きる方向性を見出していくところであると思う。諸君の卒業後の進路はそれぞれであるにせよ、この学部四年間のあいだに、ぜひ皆さんに学問の面白さを学んでほしいと思う。
 これまでの学習は、知識を蓄積するだけの受け身のものであったに違いない。大学で学ぶ内容は、人類の知恵として、それらがいかにして得られてきたのか、どのような考えやアイディアによって生まれてきたのか、そして新しい課題は何なのか、今現在進められている研究を背景に語られるであろう。発見の喜びを想像しつつ、楽しみながら学んでほしい。
 また、総合科学部では狭い学問分野に閉じこもって学ぶのではなく、幅広くいろいろな領域に関心を寄せていってほしいと願う。なぜなら、人類が直面している諸問題は大きく複雑多岐にわたるし、また社会に出て解決しなければならない問題も、ある特定の学問分野から説明できるほど単純なものではないからである。
 さらに、総合科学部の特色を生かして、多様な分野の友人を持つことを勧めたい。議論や助け合うなかで視野を広げることができるばかりでなく、まちがいなく社会に出たときの大きな財産になるだろう。
 総合科学部は諸君の入学を歓迎するとともに、二十一世紀への飛翔を期待している。

 

「したい」こと・「できる」こと・「すべき」こと

総合科学部9年度生 前田 和寛
 ご入学おめでとうございます。
 大学に入って一番最初に戸惑ったことは何だっただろうと考えてみた。新しいことばかりでいろいろあったが、やはり時間割作りだったと思う。高校から普通に進学してきた私にとってそれは驚きとともに喜びでもあった。「大学では自分の好きな授業ばかり取れる」一人暮らしになったことも相乗効果となり、自分が自由になったと感じた。しかし、この時はまだこの意味に気づいてなかった。
 そうして自分の好きなように授業を受けていった。「したい」ことを前面に押し出していった。しかし、「したい」ことのみをするだけで渡っていけるほど甘くはなかった。次第にやらなければならないことが山積みになり、また「したい」こともそれ自体をこなすことができなくなってきた。つまり「したい」ことと「すべき」こと、「したい」ことと「できる」こととの隔たりが生まれてきたのだ。したいことだけをやっていいのを「自由」だと考えていたのは誤りだった。自由とは「選択」と「責任」、この二つを持つことだった。
   今「したい」ことにとらわれすぎないでほしい。したいことをする自由には、しなければならない責任が伴ってくるからだ。まず足元を固めて、それから「したい」ことへと手を伸ばしてほしい。もし何もしたいことがないのなら、とりあえず目の前の「できる」こと、「すべき」ことをやっていけばいい。そしていろいろなことに触れるうちに、何か見えてくるはずだから。

 



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