大学院先端物質科学研究科


ともに力を合わせて新研究科の立ち上げを

先端物質科学研究科長 山西 正道
 大学院先端物質科学研究科への入学おめでとう。当研究科は、平成十年四月に発足した新しい研究科です。すでに、ホームページ等で御承知のように、当研究科の教育・研究の理念は、「理学と工学あるいは、物質と生命現象の境界を掘り下げる」ところにあります。
    こうした境界領域を意識した、研究・教育の動きはアメリカ合衆国の有力大学にも見られはじめました(これについてもう少し詳しいことを知りたい方は、Nature 一九九九年一月七日号三ページ、一月十四日号、八十九ページを読んで下さい)。
 そこでは、従来、水と油のように考えられていた物理学と生物学の融合を図ろうとする試みがなされつつあります。こうした考え方は、当研究科では発足に当たってすでに意識されていたことです。
 当研究科では、物理学と生物学という切り口に加えて、ナノ・エレクトロニクスとバイオ・テクノロジーの融合をも意識した教育・研究活動を展開していく予定です。受け身の形の勉学にとどまらず、この新しい組織を担う一員として、組織の立ち上げおよび理念の実現に向かっての院生諸君の積極的な貢献を期待しています。

 

量子物質科学専攻入学生諸君へ

量子物質科学専攻長 遠藤 一太
 壁新聞というのをご存じですか。自分の意見や主張を述べた文章を大きな紙に書いて建物の壁に貼ったもので、文化大革命時期の中国で盛んに使われていた情報伝達手段です。
今年は量子物質科学専攻長の立場を利用して「e‐壁新聞」を作ろうかなと考えています。
 新しい理念を盛り込んだ大学院ということで、運営も教育方法もまだ手探り状態ですが、研究科および専攻のめざす方向性から非常に面白い研究や人材が生まれそうだという強い予感がします。担当教官は研究者として世界の第一線で活躍していますが、同時に教育についても意欲的です。これで、うまくいかないわけがない。
 新研究科立ち上げのこの時期に入学した皆さんには、研究科の方向性を左右するという特権があります。どんどん意見・感想や提言をお寄せください。「e‐壁新聞ぺージ」はこのフォーラムが発刊されるころには開設されているかもしれません。先端研ホームページからたどって、探してみてください。
 実は、昨年度の学生による授業評価や教官のアンケートでは厳しい評価を受け、落ち込んでしまったのですが、気を取り直して間題点と私見を述べてみます。
(一)理念解釈の混乱:本専攻は決して理学分野と工学分野を統合しようとしているのではありません。1.それぞれの分野での研究に新境地が拓けることや、2.どちらの分野とも言えないユニークなものが生まれることを期待しているのです。
(二)教育方法が未確立:境界領域では標準的教育方法というのがありません。分野ごとに培ってきた教育のノウハウを利用するしかないと思います。他分野にも目を向けるために施したカリキュラム上の工夫に問題がありそうです。
(三)忙しすぎる:ゆとりがないため授業も運営も生真面目にやりすぎているかもしれません。肩の力を抜いて、臨機応変にやらないといけませんね。ジョークなしでは新しいものは生まれませんから。

 

充実した大学院生活を!

分子生命機能科学専攻長 小埜 和久
 分子生命機能科学専攻への、入学おめでとうございます。それぞれ夢や希望をもって入学されたことと思います。いまの感激を大切にして、有意義な大学院生活を送ってほしいと願っております。大学院では、身の処し方次第で、各自のもっている豊かな感性・知性に、さらに磨きをかけることができるとともに、今まで気がつかなかった新たな才能も発掘できます。かけがえのない多くの友人を得る場があり、また、十分な自由な時間、二度と得難い貴重な時間があり、目的意識をもって行動すれば、無限の可能性が広がってくる重要な時期でもあります。
 これから過ごす大学院生活をより有意義なものにするためにも、今までの受動的な知識の丸暗記から脱却して、先人たちの努力の結晶を学び、その成果の必然性を理解しようと積極的に努力することが大切です。このような地道な積み重ねから湧き上がってくる新たな知への欲求によって、自らの手で知を創製しようとする大きな飛躍の第一歩が踏み出せるはずです。
 技術立国である我が国の内外から、模傲ではなく独創的な研究と知的情報の発信基地としての役割が求められております。研究室の一員として一翼を担う皆さんの中から世界に通じる人材が、一人でも多く育っていくことを期待しております。

 



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