文学部長 田中 逸郎
この稿の執筆依頼を受けてすぐに頭に浮かんだのは、二十数年も前に読んで今なお印象深い井上靖の随想『わが一期一会』(毎日新聞に連載、後に単行本)であった。一期一会(いちごいちえ)は、茶道に由来する深遠な意味をもった言葉だそうだが、わかり易く言えば、あらゆることとの出会いが一生に一度で、再びくり返されることはない、その出会いを大切にする精神ということになるだろう。 作家は、「別離、旅情、詩、小説、人生、シルク・ロード」他に関しての貴重な思い出を綴っている。が、人との出会いについては「紙面のスペースの都合で」と断って、一切書いていない。作家にとって人との出会いを書くにはよほどのスペースが必要だったのだ。納得。 大学とは人との出会いの絶好の場の一つであろうと思う。それは教室であろうと、学生食堂であろうと、クラブやサークルを通しての出会いであってもよい。また、その人が身近にいる人なら誰でもよい。同輩、先輩、後輩、先生等々、誰でもよい。 大学はまた、勉学の場であることは言うまでもない。自分の目指す専門分野を追求する願ってもない場である。この場では、先生との接触が主となろうが、勉学ばかりではない、先生と幅広く接する機会を与えてくれるチューター制もある。ぜひ利用していただきたい。 人との出会いあるいは接触について述べた。一期一会は、過去のすばらしいものとの出会いをも意味する。大学生としての生活の中で将来「すばらしい思い出」と言い得るものを自ら求めていただきたい。作家は「結び」の中で、「若い人たちはもっと積極的に一期一会の精神を、日々の生活の中に生かすべきであることは言うまでもない。」という。同感。 |
文学部国語学国文学科 木下 裕代
西条に来て三年がたちました。初めて西条に来た時は、買い物できるような所も少なく、大雪だったこともあって、暮らしていけるのかなあと少し不安な気持ちもありました。今では大学周辺の様子もすっかり変わり、一人暮しにも慣れ、居心地良くなってきたところで卒業まであと一年です。新入生の皆さん、西条ののんびりとした雰囲気に流されず、自分の可能性を試すつもりでやりたいことをやってください。四年間というのは案外短いものですよ。 |
文学部考古学専攻 市川 直見
広島大学へようこそ。お祝いの言葉は他の人からもたくさんもらうことだろうから、実用的なことを。大学生活を楽しむために必要なこと。それは「関わる」ことだろう。お役所言葉で言えば「主体的に行動する」ぐらいか。大学はあれをしろこれをしろとは言ってこない。「××が欲しい学生は○○するように」と掲示があるだけだ。良くてガイダンスがある程度。受け身な姿勢で動いていると、多分痛い目に遭う。それに講義はビデオ講座じゃない。 もし大学に対する自分のイメージが違っていたとしても、そこでがっかりするんじゃなくて、楽しめることを見つけよう。今は自分のいる場所を押しつけられているわけじゃない。何をなすかは自分の裁量次第だ。 |