自著を語る

『ドイツ中世後期のスポーツ
  −−アウグスブルクにおける「公開射撃大会」−−』

  著者/楠戸一彦
 (A5判,415ページ)7,770円(本体) 
   1998年/不昧堂出版
 

文・ 楠戸一彦


N.N.さま
 わが家の近くでは、田植えの準備が始まりました。長い間ご無沙汰しておりますが、お元気でお過ごしのことと存じます。
 さて、昨年十月に私の初めての本である『ドイツ中世後期のスポーツ―アウグスブルクにおける「公開射撃大会」―』が出版されました。この本は、奈良女子大学に提出した学位論文に手を入れたものです。出版に当たっては、文部省科学研究費の「研究成果公開促進費」を受けました。
 ご存じのように、私は十五世紀から十六世紀のドイツにおける「スポーツ」の研究をしています。スポーツ史を研究する人々の大部分は、十九世紀以降の「近代スポーツ」に関心を持っています。しかしながら、欧米でもわが国でも、「中世スポーツ」に関心を持つスポーツ史研究者はほとんどいません。この意味では、本書は歴史の浅いスポーツ史研究の分野で、少しは貢献をしたのではないかと思っています。
 本書は、巻頭のカラー写真に続いて、四つの章から構成されています。一章では、「中世都市」アウグスブルクの成立と、都市における娯楽とスポーツを論じました。二章では、公開射撃大会が成立する背景を、射撃道具の導入と射撃訓練および射撃競技と射手団体の観点から考察しました。三章では、一五○九年の夏にアウグスブルクで実施された弩と銃による射撃大会の様子を描きました。四章は公開射撃大会の目的と参加者の社会的階層とを論じました。どうか、ご一読の上、ご批判を賜れば幸いです。
 梅雨に向かいます。お体にお気をつけ下さい。
敬具


プロフィール        
(くすど・かずひこ)
☆一九四七生まれ
☆一九七○年東京教育大学大学院教育学研究科教育学専攻入学
☆一九七六年山口大学教育学部
☆一九八五年広島大学総合科学部
 専門分野=スポーツ史(ドイツ中世後期のスポーツ史)





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