世界の大学シリーズ47

イエデボリ大学 スウェーデン




イエデボリ大学歯学部および附属病院

筆者とG.ダーレン歯学部長

夜12時の夕焼け(6月)

昼2時半の日没(12時)

福祉国家で有名なだけあって、電車やバスにも当たり前のようにベビーカーを乗せる場所がある。

世界で一番臭い食べ物といわれる「シュールストレミング」(ニシンの塩漬けを発酵させた缶詰)

近所の森でのベリー摘み(左:ブルーベリー、右:ラズベリー)


 イエテボリ市(Goeeborg)はスウェーデン第二の都市である。町は北緯68度と,サハリンの北端よりまだ北,カムチャッカ半島の真ん中くらい高緯度に位置しているが,メキシコ湾からの暖流のおかげで北海道のような過ごしやすい気候である。  この町に1891年に生まれたイエテボリ大学は,今や30,000人以上の学生と5,000人近くのスタッフを数える巨大な総合大学になっている。中でも1967年に創設され,わずか30年で歯学界をリードする地位を築いた歯学部に,私は1994年に文部省在外研究員として派遣していただいた。  彼らのかくも勤勉な研究姿勢は,充実した社会保障のもと,全人が不自由なく働ける社会制度に基づいている。同時に,勤労に対する休暇も名実ともに保証され,7月には2〜3週間,留守番を残して研究室が空になってしまう。法的に保証される休暇は5週間(連続)以上で,拒否すると雇用者に罰則がつく。スウェーデン人は,この長い夏期休暇を南ヨーロッパでバカンスにいそしみ,あるいは森の中の「サマーハウス(別荘)」でのんびり過ごす。仕事一辺倒でなく,生活に緩急をつけることで,優秀な研究成果のもとになる豊かな創造性を培っているようだ。『しかし,いったいこの遊ぶパワーはどこからきてるのだ・・?』と思う間もなく,この北国は短い秋を経て長く暗い冬に入る。  北欧の童話,ムーミンの物語をご存じだろうか。主人公のムーミン一家が,長く暗い冬に家に閉じこもって過ごすように,スウェーデン人も家と職場の往復をくりかえす。朝9時に明け,昼3時に暮れる冬には充電するようにひたすら働き,真夜中でも明かりの残る素晴らしい夏に,はじけるように遊ぶのである。 この北国の大学の歯学部と広島大学歯学部が学部間協定を結んだ。今後の大いなる交流と相互の発展を期待して止まない。
   
 
歯学部第二保存学教室 竹本俊伸(たけもと・としのぶ)



 

 

広大フォーラム31期2号 目次に戻る