世界の大学シリーズ48

カセサート大学 タイ




大学の創始者たち

経済学部の研究協力者

学内の緑の中のキオスク

南タイの漁村にて(筆者中央)

色鮮やかな漁船(南タイの漁村にて)

私のカセサート大学

 公私ともども、カセサート大学およびそのキャンパスにはお世話になっている。
 もう10年近く、年2回のペースで同大学を訪れている。1994年から翌年にかけて、日本学術振興会の支援を受けて1年ほど経済学部に籍を置いたが、ホストを引き受けてくれたのはサロート準教授(写真上段右側)であった。同学部のスタッフには、いつも懇切丁寧に調査研究の助言をいただいている。学恩と友情の重さははかり知れない。
 カセサート大学は1943年に農学の前進を目的に設立された国立大学で、チュラロンコン大学、タマサート大学とならぶ名門校である。今は学生数23,000人を擁する総合大学である。メイン・キャンパスはバンケン、ドンムアン国際空港からバンコクに向かう途中、車で20分のところにある。最近は新しい建物が次々にできて手狭になっているが、それでも構内には緑があふれ、水鳥が遊ぶ池が点在している。ほっとできる憩いの空間がある。
 バンケン・キャンパスには農業・協同組合省関係の部局や調査研究機関が同居している。ここ10数年の間に移転してきたものだが、農林漁業分野の研究者にとってはきわめて都合がよい。世界的に有名なバンコクの渋滞を体験することなく政府機関をまわり、一網打尽に資料と情報を集めることができる。もっとも、炎天下に広いキャンパスを歩くと体力を消耗するので、私は構内を流しているバイク・タクシーを利用して経済学部と関係機関との間を行き来している。少々危ないが、運賃は5バーツと安い。
 政府役人のなかには「カセサート・マフィア」と呼ばれる人的ネットワークがある。中央・地方をとわず、農林漁業行政を担っている人たちの多くがカセサート大学の出身者によって占められていることからこう呼ばれる。地方に出先調査機関をもたない大学の研究者たちには、目と鼻の先にあるこのネットワークの中枢が心強い味方となる。私も資料収集やフィールド調査のさいに随分とお世話になっている。
 いっそ大学周辺に快適なホテルがあればと思っていたら、本当にできた。このホテル、経済危機下にもかかわらず結構繁盛している。私のような外国人研究者、政府や大学が主催するセミナーに参加するために地方から来た人たちでにぎわっている。近くの門まで歩けば、構内を走るバイク・タクシーを簡単につかまえられる。ここ数年、私の活動拠点となっている。
 広島大学とカセサート大学との交流が本格化していると聞く。願ってもないことである。お世話になりっぱなしの友人研究者たちに、何か恩返しができないかと考えている。交際交流のパイプを太くしてほしい大学である。 (詳しい大学案内はホーム・ページをご覧ください。www.ku.ac.th
   
 
生物生産学部教授 山尾 政博



 

 

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