自著を語る

『バイオテクノロジー講義』
著者代表/山田 隆
(B5判、156ページ)
3,000円(本体)
1999年/朝倉書店
 



バイオのファミリーレストラン
 「クローン羊」「遺伝子治療」「DNA鑑定」「遺伝子組替え農作物」「ヒトゲノムプロジェクト」など、バイオテクノロジーのトピックスが新聞やテレビを賑わしています。バイオテクノロジー(バイオ)に関心のある人が、いざこれらを勉強しようとすると、やれDNAの構造だ、やれ遺伝子発現のメカニズムだと予備知識の山の洗礼にあいます。これらを消化しているうちに疲れてしまい、折角の興味そのものが色あせてしまうこともしばしばです。フランス料理のコースをじっくり味わうのも良いのですが、気軽にファミリーレストランへ行ってメニュー表から好きなものを気軽に選ぶ]]そんな形でバイオを楽しむことも大切でしょう。本書はバイオのホッとな話題をとりそろえてお客を待つ「レストラン」です。教養的教育科目の教科書として用いるという目的もあって「講義」というタイトルがついています。


一般読み物としても面白く
 ここでは、計十五のバイオの話がオムニバス方式で登場します。各章の内容は、物質・微生物・動物・植物・環境・人工生命と多岐にわたっており、各章読み切りの形となっていますので、どこからでも気軽に読めます。また時宜をえたトピックスも多く含んでいますので、学生のみならず一般市民にとっての読み物としても十分魅力あるものと思います。食わず嫌いの人もこのレストランでひと味違うバイオを賞味できるものと期待しています。
 本書の執筆者は昨年四月に発足した大学院先端物質科学研究科の分子生命機能科学専攻に所属する教官です。「理学と工学」、「物質と生命」の境界を掘り下げる--を標榜する新研究科において、他にはないユニークな視点を持ち味としています。この視点も本書の特徴として、いくつかの章にみてとれると思います。
 本書をきっかけに、一人でも多くのひとが、バイオテクノロジーの面白さを理解し、ひいては自らその興奮を体験しようとこの世界に参加してくれればと願っております。


プロフィール        
(やまだ・たかし)
☆広島大学工学部第三類化学系発酵工学講座教授
☆学歴:大阪大学工学部発酵工学科(一九七五)、大阪大学大学院工学研究科発酵工学専攻博士課程前期(一九七七)
☆略歴:三菱化成生命科学研究所研究員、カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員、広島大学工学部助教授
☆所属学会:日本生物工学会、日本農芸化学会、日本植物生理学会、米国微生物学会
☆専門分野:バイオテクノロジー、染色体工学、植物ウイルス学、植物・微生物相互作用、シグナル伝達機構
☆研究概要:「微生物を素材として高度な機能システムを再構成する」ポストゲノム時代の重要課題として、人工光合成・人工窒素固定システムの開発などを目指している。詳細については、「広島大学工学部」三田出版pp162-163参照のこと。




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