留学生の眼(73)




日本のアニメ 世界をめぐる

文写真・ No Yujin
留学生センター
日本語・日本文化研修留学生
   (韓国出身)

 今日私たちは地球上のあらゆるところで「日本」を見つけることができるようになった。ソニーのウォークマンで音楽を聴く若者、ホンダの自動車で会社に行くサラリーマン、任天堂のTVゲームに夢中の子供たちなどもそのいい例である。でも、そんな日本文化の中で最も世界の人々に親しまれているものがあるとしたら、それはたぶんアニメだろう。多くの広大留学生たちも日本に来る前に一度くらいは日本のアニメを見たことがあると思う。あるいは見たことがあるけれど、それが日本のアニメだとは知らない人も多いのではないだろうか。もちろん韓国の子供たちも日本のアニメが大好きだ。今では世界中の子供たちが日本のアニメに夢中なのだろう。最近では子供だけではなく大人までが日本のアニメに興味を持っているようだ。もはやアニメは子供だけの所有物ではなくなりつつあるのだ。では、なぜ日本のアニメはこれほどまでに人気があるのだろう。また、それによって日本文化への関心は高まっているのだろうか。
 まず、日本製アニメの人気の秘訣は何よりも子供の心をしっかりつかんでいるところにある。説教くさくなくて、どこにでもいそうな普通の少年、少女たちが主人公である親しみやすさ。また、他の国のマンガが子供だけをターゲットに絞っているのに対して、日本のマンガはみんなが楽しめるものが多い。つまり、はっきりと定められた対象年齢というものがないのだ。
 それでは、これほどまでに日本のアニメが人気があるとしたら、日本にとってそれはどんな価値があるのだろう。
 まず日本にとってアニメは文化商品だということである。日本のアニメは世界のアニメ市場の七○%を占めている。堂々と劇場で公開するほど人気が高く、映画の一分野としての位置を確保している。海外でもよく知られている宮崎駿の「もののけ姫」などは、その年の興行成績 No.1を記録した。また、ハリウッドの映画会社では来年の春か夏に、「もののけ姫」を全米公開する予定だそうだ。これはいかに日本のアニメが世界に通用するものであるかを見せてくれる一つのいい例になるだろう。そして、これが成功すれば日本のアニメは日本にとって海外輸出品の中で最も商品性の高いものになることは間違いないだろう。
 それでは、文化的な面ではどうだろう。
 日本的な色彩が強い「もののけ姫」が、もしアメリカでヒットしたら人びとは日本に対して興味を持つようになるだろう。また、日本のアニメをただの娯楽として受け取るだけではなく、それをきっかけに日本に興味を持ち、日本語をマスターしたいと思う人も出てくるはずだ。私もその中の一人である。日本への興味が高級な文化でもなければ高度な思想に裏付けられた権威のある文化でもない、大衆的なアニメから生まれてくるのである。これこそがアニメの持っているパワーなのだ。日本のアニメは日本への関心を引き出す力を持っているという点で日本の文化財のなかで最も奮闘している分野といってもいいのではないだろうか。
 このように日本のアニメはみんなに求められる存在になった。そして今では日本の文化を広く伝える役割をも果たしている。それでいて決して押し付けがましくもない。今までの異文化の伝達の形とは違うのである。日本の文化を受け入れている現在の海外の姿勢を見てみると、その分野に関心を持ったものが自分の興味から接近するといった、能動的な形を持って行われている。これは日本への新しい関心のスタイルであり、これこそが自然な文化交流なのだ。つまり今では、アニメという、普遍性があり、子供から大人まで、誰もが気軽に接することのできる日本文化ができたのである。
 もちろん、どんなに好かれている文化でも短所はある。多くの親たちが心配している日本のアニメの逆効果だってあるだろう。日本のアニメはこういった短所をこれから直していかなければならない。それでも、これからも世界中の人々に愛され続けていくだろう。日本のアニメはそういった意味で日本文化の強い味方なのだ。
 これからアニメをどのように発展させていくか。ここに日本文化の可能性も秘められているのではないだろうか。



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