2000字の世界(30)
附属学校にエールを送る
〜PTAから見た附属中・高〜
文写真・ 杉 山 政 則(Sugiyama, Masanori)
医学部教授
例年、春になると、わが子の通っている学校からPTA役員を選出するための投票用紙が各家庭に配られる。今年も例外ではなく、四月中旬に投票用紙がわが家に届けられた。そして家族会議のいつもの結論として、その用紙に「お任せします」と記入した。いわゆる白票である。ところが、投票が済んだと思っていた矢先、中学三年のわが娘の担任から突然の電話を頂いた。クラスのPTA役員をぜひ引き受けて欲しいとのこと。私の家内は市内の公立小学校に勤めており、毎年のことながらクラスのPTA役員をお願いするたびごとに頭を痛めてきた。そこで、電話口に出た家内は決めかねている担任の先生に配慮したのか、「クラス役員を引き受けます」と即座に答えていた。電話が切れた後、「小学校の先生の方が大学の先生より忙しくて大変だから、パパが引き受けたら!」という娘のツルのひと声で私のPTA役員就任があっさりと決まってしまった。さらに、家内からのだめ押しの発言として、「具体的な係を依頼されたら、喜んでお引受けしますと答えてあげてね」とのコメントがあった。
最初の運営委員会に出席したところ、案の定、PTAの副会長職を仰せつかることとなった。それでも、会長職は高校生を持つ保護者から選出されるとの決まりがあるらしく、最も恐れていた事態だけは免れた。
附属中・高では、保護者同士の親睦を目的として、さらには、教官と保護者とのコミュニケーションの場を提供するため、六月の文化祭にはPTA主導型のバザーが開かれる。その実行責任者のひとりとなった私は、当日、遅刻しないよう早めに出かけ、押し寄せるお母さんパワーに圧倒されながらも会場の整備に一役買った。また、九月の体育祭ではPTA活動の一環として缶ジュースや清涼飲料水の販売をした。これらの活動を通して、中学校・高等学校という枠や、学年・クラスを越えて、多くの保護者の方々と触れ合い、様々な思いを知り、共通の目標に向かって取り組む楽しさを味わうこともできた。
PTAの役員として学校へたびたび訪問することで、校長や副校長をはじめ諸先生方とお話しする機会が多くなった。そのたびごとに、附属の雰囲気はとても良いと感じられる。なぜなら、生徒たちを「うちの子」と呼び、わが子のように接しているし、生徒もまた先生に身内のような姿勢で気軽に話し掛けている。そんな姿につい感動してしまう。
最近、二人の先生からあいついで依頼があった。私の研究室に所属する外国人学生(留学生)を「国際理解」という授業に講師として招きたいとのこと。その際、担当の英語の先生は講師の選定にあたっておもしろい注文をされた。それは英語が得意で、かつ、日本語はそれほどでない学生を紹介して欲しいとのことであった。その要望にこたえるべく、わが研究室から大学院生であるスーダンとブラジルの留学生がはせ参じた。授業が終わって戻ってきたふたりに授業の感想を聞いてみた。彼らいわく、高校二年生のクラスで祖国の話をしたところ、流暢な英語でかなり多くの質問があったとのことであった。そして、笑いながら言った。「私たちの研究室のシャイな大学生より、附属高校生の方が英語の会話能力は高いかも」と。また、中学生の授業では、日本語の得意な韓国とマレーシアの留学生ふたりが民族衣装を着て奮闘したのだった。
附属の校風は自由と自主性を重んじることであると、校長先生は常に強調されている。自由には常に責任が伴うことを生徒自身が自覚してくれているとすれば、これほどすばらしい学校はない。言われたことだけはするが自主的には何もしない若者が多い今、附属出身の学生は人の目を気にせずサッと行動できるとの意見を医学部の複数の教官から聞いた。そんな評価にPTAのひとりとして、つい微笑んでしまう。
ごく最近、PTA運営委員会を開いたところ、さらにPTA活動への父親の参加を促すためにも、ペンキ塗りや草取りなど、構内の美化活動にも参加したらどうかという意見が挙がった。古い校舎を何とかPTAの手で良くしようという心の表れである。とにかく、思ってもみなかったPTA副会長の就任が、わが子の通っている学校の現状と諸先生の取り組みを知る上でとても役立った。そんな附属中・高の先生方にエールを送り続けたいと思う今の私である。
体育祭バザーでのPTA活動(平成11.9.18撮影)
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