9人の“学長”誕生 

21世紀に向けた改革プラン全学公開シンポジウム

愛され、慕われ、頼りになる広島大学を目指して
─学生の活性化と地域社会への貢献─

(江坂宗春 生物生産学部助教授)

 教育改革のキーワードを「いかに学生が主体的に学問に取り組むか」とし、学生主催の問題提起型シンポジウム、学生フォーラムの開催、学生活性化支援センターの設立など、学生の活性化のための方策を講じる。
 地域に開かれた大学、地域に貢献する大学への方策として、(1)広島及び中国地方の問題・特殊性に目を向けた広島学会の設立、(2)東広島キャンパス周辺のアカデミック環境を利用した公開シンポジウム、大学や研究所公開等を行う広島サイエンスフォーラムの開催、(3)広大生涯学習センター及び広大開放センターの設立、(4)市役所、公民館、大学事務局・ホームページなどへの市民からの質問箱設置を行う。

一学部・六研究所構想と三年次から 修士二年までの一貫教育構想
(浦 光博 総合科学部教授)

 「自由で平和な一つの大学」などの基本理念に立って、少子化、独立行政法人化問題を背景として、(1)次世代科学を育成する基盤整備、(2)少子化に伴う教育システムの多様化と充実、(3)高度専門教育システムの拡充、(4)学問・研究面における中枢性の創出、(5)地域開放性の確保を改革の目標とする。
 改革案の主要点は、(1)学部・研究科から研究所型への移行、(2)三年次から修士二年までの一貫教育(基礎教育、教養的教育の二年を加えた六年間の教育構想)で、具体的には、教育研究組織を一学部・六研究所へ再編成する。
 行政組織の改革として、学長の権限強化、学内及び第三者による評価の強化、民間からの副学長登用などを行う。

学部教育における専門性の充実と研究組織の活性化
(相田美砂子 理学部教授)

 学部教育においては、一年次からの専門教育受講科目数を増やし、専門的知識取得を志向する学生の活力を引き出す。
 教育専門教官と研究専門教官の明確な区分を設け、助教授、助手制度を廃止して、研究組織の活性化を図る。具体的には、新任教授を研究専門教官として、ポスドク(任期二年)をスタッフとする十年期限のプロジェクトリーダーとする。プロジェクト解散後、教授は、教育専門教官として、教育専門技官としての講師(任期なし)と共に、学部及び大学院の教育の運営に当たる。すべての組織とは独立した人事審査機関及び倫理・規律委員会の設置が必要である。

能動的アカデミズムの府としての大学の復活
(平谷篤也 理学部教授)

 大学の基本的機能は、「知」の創造、流通であり、研究機能と不可分に結びついた「未来の知識を創造する能力を育てる教育機関」という大学の果たす役割に立脚した改革を行う。
 基本は、大学改革の戦略を明確化し、大学構成員が認識することであり、社会における大学の役割と機能、能動的アカデミズムの府としての大学の復活を目標とする。
 基本戦略は、大学と社会との最も重要な接点である学生を媒体とする徹底した教育改革で、二次的戦略として、研究面、機構面、運営面の改革を位置づける。大学教育研究センターを中心とした大学改革の戦略参謀本部を設置する。

二十一世紀の広島大学像マスタープラン部会
座長・副学長 生和秀敏

 二十一世紀の広島大学像マスタープラン確定とそれに基づくアクションプランの策定作業を進めているマスタープラン部会は、本年七月、二十一世紀を担う五十歳未満の若い教職員を対象に「私が学長だったら広島大学をこう変える」と題して二十一世紀に向けた改革プランを募集した。この募集に対し、九件の応募があり、その内容は教育改革、組織改革、環境整備、地域貢献など多岐にわたり、また、それぞれユニークなものであった。
 去る十月十四日、附属図書館ライブラリーホールにおいて、この改革プランに応募いただいた九人の『学長』をシンポジストとして「二十一世紀に向けた改革プラン全学公開シンポジウム」が開催された。
 シンポジウムには、約百二十名の教職員が参加し、予定時間を約一時間オーバーして、教育改革を中心に活発な意見交換が行われた。意見交換の詳細については、紙面の関係で紹介できないが、シンポジウムの終わりに当たって、原田学長からシンポジウム全体の内容をまとめた感想が述べられたので、その概要を以下に紹介する。
「これからの大学は、学生主体の、学生にとって魅力のある大学でなければならない。定年後の人生に生かされるような教養的教育(総合教育)を行うと同時に、専門性の高い分野にあっては早くから専門教育を受けられる体制を採る必要もある。重要なことは、学生の個性に合わせた教育が行えるような体制を構築することである。
 また、研究大学を目指し、かつ、定員削減又は独法化への対応として、教員を専門分野でまとめて組織し、教員組織のスリム化を図る必要がある。
 学部間流動性の保障、横断的研究プロジェクトの組織、バリアフリーのためのシステムづくり等の環境整備など、今から着手できる改革も重要である。
 なお、大学改革を推進するためには、改革の参謀本部を置く必要がある。」
 なお、本ページには、シンポジストとして参加いただいた八人の『学長』の発言概要を掲載している。詳細については、ホームページ(http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp./~mpsympo/member.htm)からアクセスできるように掲載しているので、御利用願いたい。また、総合科学部の金森貞夫講師から「広島大学株式会社改革のための提言」が提案されているが、公務の都合により、シンポジウムを欠席されたため、ここへの掲載を割愛させていただいた。ホームページを御利用願いたい。

バリアフリーユニバーシティー─人にやさしい学府を目指して─
(相原玲二 総合情報処理センター助教授)

 身体的問題、社会人や老人、言語や文化の違いなどハンディキャップによる障壁及び組織としての障壁を克服することを主眼に置いて、大学教育研究の機会増大、なすべき学術教育研究の推進、誰にとっても快適な環境づくりのための改革を行う。
 そのため、(1)基礎的環境の整備、(2)在宅教育を視野に入れた研究開発、(3)ボランティアをも活用した支援体制の確立、(4)地域社会との連携・還元を推進し、バリアフリーユニバーシティーとして、人にやさしい学府の構築を目指し、平和を希求する精神、豊かな人間性を培う教育など、広島大学の五原則の精神を実現する。

拠点性の充実化に向けて
(甲斐克則 法学部教授)

 総合大学の利点を生かした、問題解決型の大型プロジェクトを創設し、恒常的に共同研究、大型シンポジウムなどを実施して、学術研究の拠点大学としての確立を図る。そのため、学外研究者のための宿泊・研修施設の設置、広島大学出版会(仮称)の創設を行う。
 特に若手教官を対象とした「大学教育術」開発・研修システムを構築するとともに、教育評価システムを確立する。また、学生が勉学面でのリーダーシップを涵養できるような企画を提供して、大学教育の拠点化を目指す。
 大学運営のあり方自体を研究・研修するシステムを確立し、大学運営の拠点化を目指す。

広島大学を良くするために
(鎌田 勇 総合科学部助教授)

 学生を主役とする教育改革を中心に、米国州立大学をモデルとした大学院大学・研究大学へと変革する。
 学士課程教育では、一般教育(総合教育)に重点を置き、総合的知見、批判的思考力、合理的判断力のある、民主的で自由な精神の持ち主を育成する。
 大学院の大幅な拡大・充実化により、専門教育・研究は主に大学院で行う。
 授業の質、教員の意識の向上、一科目四単位、五十分授業、大学自己改革恒常化常設組織、大学ハードウェアー整備、教員待遇改善、学生生活支援総合センター設置等を行う。
 社会・人文科学と自然科学の総合的知の、地方文化発信源を目指す。

豊かな人間性の育成と地域社会
(飛田郁也 総務部企画室企画係長)

 地域社会を中心に見据えて、豊かな人間性を育む大学とするため、(1)県内入学者確保のための県内公私立高等学校との連関校協定締結、(2)新入生の確保、自力での進路決定を保障するための全学一本化入試の実施。(3)常設アンテナショップ設置等による地域社会との交流を推進するとともに、(4)事務の根幹である学生サービス業務の充実を念頭に置いた事務体制の再編を行う。
 これらにより、広島大学の良さが認知され、家庭で話題となり、親はリフレッシュ教育を受け、子供はあこがれて本学へ入学する、この循環を完成させて、広島の子を広島大学が超一流の社会人に育て上げることを目指す。



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