留学生の眼(74)




留学生活の回顧

文写真・ 楊  連 玉(Yang Lian Yu)
大学院国際研究協力科
 私は幼少時から東アジアの歴史、文化、風俗習慣などについて強い関心を持っていました。初めて日本に来たのは桜が満開の季節でした。私は福岡市内にある日本語学校に通い、そこでいろいろな国から来た留学生と接し、またたくさんの日本人と知り合いになって、彼らとは今でも交流を続けています。現在留学生たちは卒業し、日本全国に広がって、大学で自分の研究を続けている人もいるし、会社で一生懸命に働く人もいます。留学生の来日目的は様々ですが、「日本へ行って日本語を身につけたい」、「日本の先進的技術や経営のノウハウを学びたい」、「将来母国に帰って素晴らしい経営者になりたい」など、強い勉強意欲と大きな夢を持っています。

 中国人留学生の場合はどうでしょうか。日本に来た留学生の中で、国公立大学に進んだ者は学費の負担がほとんど無く、勉強に専心することができます。しかし私立大学に進んだ者は高い学費の負担、人間関係の悩みや物価の高さなどの不安があると思います。留学生は日本語の勉強や、新しい環境に慣れることに精一杯です。

 昨年広島に来て、最初は不安が多く、かなり落ち込んだこともあります。理由は指導教官の突然の病死、方言の違いで戸惑ったことなどです。九州にいたときには、博多弁はとても可愛らしく、親しみを感じましたので、すぐに慣れ日常生活の中で不自由は感じませんでした。

 次に、私にとっては外国文化の一つである、日本のスポーツや食文化について述べたいと思います。まずスポーツには大変興味を持っており、相撲やプロ野球、プロゴルフのテレビ中継をよく見ていますが、中国のものとは違うところを感じました。例えば中国には相撲、プロ野球、プロゴルフはほとんどありません。ゴルフは最近始まったばかりです。日本の相撲は、力士の回しを締めている姿、審判長、行司の服装など、初めて観る外国人にも、日本の文化であるというインパクトがあります。単に競技の勝負を見せるだけではなく、相撲の土俵には日本文化が集約されていると思います。

 もう一つ日本の食文化についても話したいと思います。日本では様々な和食や外国の料理店がたくさんあります。しかしどこに行っても同じ定食チェーン店があって、料理の味は大体同じです。中国では南から北へ至るまで、地方によって食物が違い、食文化は大変多様で、旅行者の人気を集めています。

 日本の生活で私が得たものは多く、楽しいものです。日本語が上達したこと、奨学生に選ばれたこと、たくさんの友人ができたことなどです。その中で、いろいろな人と出会ったことが、私の留学生活を単調な学習だけに終わらせなかった要因だと思います。一緒に貧乏旅行をしたり、人生について語り合ったり、お互いに励まし合う友人がいて、精神的にも支えられてきました。人と人の交流があることによって、私たちの心と生活が豊かになることをしみじみ感じました。他の人とのコミュニケーションを大事に思えるようになったことが、私が日本に来て一番よかったことだと思います。

 もちろん日本に来て、辛かったことや失望したことも沢山ありますが、こうして異文化との接触を、体験をもって知ったことは、これからの長い人生において大きな糧となり、私の宝物となることでしょう。この体験を大事にして、これからの人生を充実させていきたいと思います。



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