世界の大学シリーズ50 ミュンスター大学 ドイツ |
1 伝統的建造物に指定されている哲学科の建物の前で |
3 大学の前にあるロマネスク様式のドームとドーム広場、ここでは週2回、市が開かれる。 |
4 ランベルト教会の鉄檻 |
5 最も世話になった秘書のBeverfoard女史 |
2 Siep教授のお宅に招待されて |
ウエストファーリア条約と言えば、誰もが知っている30年戦争の講和条約である。この条約が結ばれたのがミュンスター市である。この街は人口29万人、ドイツ12古都の一つに数えられている。地理的には、ドイツ北西部に位置し、ロンドンやベルリンとほぼ同緯度の北緯52度である。政治的には社会民主党が強いが、宗教的にはカトリックの街であり、プロテスタントの多い北ドイツでは珍しい存在である。 ウエストファーリア条約は新旧両派の争いに決着をつけた条約であるが、同時にドイツの領邦国家体制を確定し、ドイツの後進性を決定的にした条約でもある。それにしてもドイツにおける宗教戦争は凄まじかった。写真4はランベルト教会につり下げられている鉄檻である。弾圧されたカトリック教徒が、プロテスタントの指導者を殺し、この鉄檻に入れて、その死体を鳥についばまさせたと伝えられている。ロマンチック街道の小都市でも、逸話として残っているのは、宗教戦争関係の話が多い。ドイツ近代史は、この観点抜きには何も語りえないであろう。 この街にあるミュンスター大学(正式な名称はWestf獲ische Wilhelms Universit閣)は16世紀後半、当然のことながらJesuiten-Kollege(イエズス会神学大学)として出発する。それから400年余り、現在では学生数4万人を誇るドイツで三指に入る総合大学として発展している。大学は市民の誇りであり、タクシー運転手が「おらが街の大学」を自慢するのを何回もこの耳で聞いた。その由来からも分かるように、神学、哲学関係は極めて充実しているが、法学部や医学部などの他の学部の評判も頗るよかった。私が教えを請うたSiep教授は『ヘーゲルとフランス革命』の著者として夙に知られているリッターの後継者であり、現在はドイツ観念論における実践哲学の研究で学会をリードしている。現在、Siep教授の学位論文を翻訳中であるが、近い将来には教授を広島にお招きして更に交流を深めたいと考えている。 文学部哲学講座 山内廣隆 |