原医研原爆被爆者データベースの公開

文・ 隅 田 治 行
  (Sumida, Haruyuki)
   原爆放射能医学研究所附属国際放射線情報センター
  「被爆者情報担当」技術専門職員
はじめに
 広島大学原爆放射能医学研究所では、原爆被爆者の基礎資料の整理を大型汎用機のデータベースで行っています。被爆に関する豊富なデータの整備・提供により被爆者医療研究等の進展に寄与しています。この度、マイクロソフトのASP(Active Server Pages)を利用し、データベースをホームページとして公開することとなりました。現在はデータベースの概要、若干の数表、被爆者人口の推移を示し、データベースの検索が可能です。
 今後、皆様のご意見、要望等を取り入れて、拡充したいと思っています。是非、一度、訪れてください。ホームページのアドレスはhttp://www.rbm.hiroshima-u.ac.jp/abs/です。
 広島大学原爆放射能医学研究所ホームページからでも接続可能です。

原爆被爆者データベースについて
 データベースの名称はABS(Atomic Bomb Survivors in Hiroshima Database System)と言います。広島に投下された原子爆弾による被爆者に関する各種資料をレコードリンケージ処理などを行い、被爆者データの整備を行っています。
   ABSバージョン11(一九九九年十二月十三日)の状況は資料数は十二種類、登録履歴は二八八万六四七五件、登録人数は二八万八二八九人です。

ABS93D
 昭和五十八年度より実施している被爆地点に基づいて正確な距離を測定して百間隔で表示する作業です。この距離資料を基にDS86線量推定方式に準拠した原医研線量推定方式、原爆被爆者線量一九九三年(Atomic Bomb Survivors 1993 Dose:ABS93D)推定線量システムにより、近距離直接被爆者の空中カーマ*、遮蔽カーマ、十五臓器の臓器線量の推定を行っています。現在までに、被爆地点確認者六万五一五二人、線量推定者三万六一七人、コントロール二万一一九一人となっています。
(*Kinetic Energy Released in Material)

ABSと人口動態死亡票の照合
 総務庁より指定統計の目的外使用許可をもらい、県内の死亡者を入手して、ABS登録者に死因、死亡日をリンクしています。 

ABS公開データの作成
 ABSは被爆者のプライバシー擁護のため、大型汎用機は外部から遮断されています。ABSより個人情報が特定できない項目(性別、被爆分類、被爆線量、生死区分、調査時年齢、死亡時年齢、死因)を抽出して、別の媒体に記録し、WWWサーバーに転送する方法で作成しています。

おわりに
 公開データは自由に利用できます。この情報を用いてなされた調査研究の発表に際しては、本資料を利用した旨を明記し、かつ論文、報告書などの別冊を当センターへ御寄贈ください。
 その他の利用については、広島大学原爆放射能医学研究所附属国際放射線情報センター被曝資料利用申込書で申請してください。
 原爆被爆者データベース公開にあたり、ABSシステムの紹介の機会を与え下さった早川式彦原医研所長、伊藤明弘センター長、星正治センター教授ならびに関係者の皆様方にこの場を借りてお礼申し上げます。

ABSと人口動態死亡票の照合結果
調査年 広島県死亡者数 死亡被爆者数
1993年 平成5年 22,115人 3,752人
1994年 平成6年 22,127人 3,560人
1995年 平成7年 23,224人 3,886人
1996年 平成8年 22,267人 3,687人
1997年 平成9年 22,996人 3,692人

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