自著を語る
『嚥下障害の臨床:リハビリテーションの考え方と実際』
著者/谷本啓二 他
(B5版、370ページ)
5,500円(本体)
1998年/医歯薬出版
みなさんは、嚥下障害ということばをご存知ですか。嚥下障害は、口から胃へと食べ物を送るにあたり何らかの障害が起こって、食べ物をのどや胃へ送ることができなくなったり、誤って食べ物を気管へ飲み込んでしまったりする病気をいいます。気管に食べ物が入ったら、窒息したり、誤嚥性肺炎という病気になって、死亡することもあります。この原因にはいろいろありますが、脳卒中はその中心的存在です。この病名は、みなさん、聞かれたことがありますよね。これは脳血管の障害により、急激に意識障害や神経症状を呈する病気です。脳卒中後の後遺症に体の片側が動かなくなり、その訓練として歩行訓練などが行われることはよく知られていますが、実は嚥下障害もしばしばみられる後遺症のひとつなのです。嚥下障害になると経管栄養といって鼻からチューブを入れられることがしばしばあります。
最近、口から食べるということの重要性が叫ばれるようになってきました。QOLという言葉はQuality of lifeといって生活の質の向上を目指す医療が重要であるという認識から生まれてきました。嚥下障害のリハビリテーションは経管栄養から経口栄養へQOLを高めることを目指して訓練するものです。
本書は脳卒中などの後遺症としての嚥下障害のリハビリテーションについて、その考え方と実際の方法について詳しく述べた実践書です。嚥下障害のリハビリテーションには、チームアプローチが非常に大切です。実際の医療現場においては、チームアプローチの実践は難しいことが多いようですが、きっと近い将来には、患者さんを中心としたチームアプローチが日本中に広がっていることと期待しています。本書がその第一歩になってくれればと思って、この本を編集しました。
嚥下障害の発見・治療には医療職だけではなく、患者さんやその家族もとても重要な役割を果たします。みなさんも良かったらこの本を読んでみてください。
プロフィール
(たにもと・けいじ)
☆一九五○年呉市で生まれる
☆一九七七年広島大学歯学部卒業。広島大学助手
☆一九八一年広島大学講師歯学部
☆一九九○年広島大学助教授歯学部
☆一九九五年広島大学教授歯学部
☆一九九五年以来、日本嚥下障害臨床研究会代表
広大フォーラム31期5号
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