模擬陪審裁判を終えて
文・ 法学部四年 大 山 由 紀
今年の模擬陪審裁判の脚本は、私が担当しました。内容は、携帯電話から出ている電磁波で医療機器に誤作動が生じ、その結果ある人が死亡した事件について、医療過誤か殺人事件かを問うものでした。
元々、趣味が読書と作文なので、小説をイメージしながら書いたのですが、小説として読ませる文章と、裁判劇として聞かせる文章とでは、全く性質が異なるものだということを痛感しました。と同時に、弁論術をもっと勉強しておくべきだった、本職の弁護士や司法職の方々に訴訟現場のことを聴きに行くべきだった、などと反省もしました。
陪審員は一般公募で参加していただいた方々で、その評決の結果は「無罪」でした。小説だったら私の意図だけで「有罪」に持ちこんでいただろうに、良心的な陪審員の方々に審議していただくと正反対の結果になる、というのは、楽しい体験でもありました。
しかし、病院に携帯電話を持ち込むことは銃を持ち込むに等しい行為だと考えている医療従事者の感覚と、いつでもどこでもコールしたいから携帯電話を持ち歩く一般人の感覚との温度差が、まだまだ大きいということを再認識した評決結果でもありました。
専門的な語句が多いくせに言葉足らずな私の脚本でしたが、役者(甲斐刑法ゼミ生)の迫真の演技や、絵やポスターなどの裏方の努力、実物の小道具などのおかげで、リアリティのある裁判になったと思います。
また、医学部の小嶋亨先生には、準備段階から本番まで貴重なアドバイスを賜わりました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
次回は、陪審員の立場で参加したいと考えていますので、後輩の皆さん、来年以降も頑張ってください。
(おおやま・ゆき)
検察官による証人喚問の一場面
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