茫茫四十有五年

 檀 上 正 孝(だんじょう まさたか) 学校教育学部言語教育講座 


〈部局歴〉
 昭和40・4 (私立学校)
   41・4 教育学部東雲分校
   53・6 学校教育学部
   
 


 昭和三十年三月、受験のため初めて広島大学という所へ来た。当時の入試は三日間つづいたと思うが、校庭の片隅で寒風にふるえながら「不動心」碑の台座に腰をおろして昼の弁当を食べた記憶は今なお鮮明である。試験の結果は我ながら不首尾であったから、これで広島大学とはお別れ、と思っていたら合格通知が来た。ご縁とは不思議なものである。爾来、学生生活十年、博士浪人一年に、教職三十四年を加えて、まるまる四十五年間も広島大学のお世話になり続けた。戦後の焼跡から、安保闘争や大学紛争を経て、高度成長、大学移転等、様々な思い出が浮かぶ。それと共に大学も膨張し、科学技術偏重の傾向が著しくなる一方で、文系はいよいよ旗色わるく、自己点検もつらいものである。折からバブル崩壊。企業の破産や合併を対岸の火事と眺めていたら、大学も独立行政法人化と来た。新生広島大学の発展を祈るばかりである。


学生たちと共に「不動心」碑の前で



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