退官者のつぶやき
室 山 敏 昭
(むろやま としあき) 文学部日本語学日本文学講座
〈部局歴〉
昭和39・4 (私立学校) 50・4 文学部
44・4 (鳥取大学)
母校に帰って、はや四半世紀に近い歳月が過ぎ去り、三月には停年を迎えることになりました。母校に帰った時には、責任の重さや将来の不安が胸をよぎり、うっとうしい気持ちだったのを今でもはっきりと覚えています。
母校で過ごした歳月は極めて濃密な時間の連続でした。その大半を、着任当時ようやく盛んになりつつあった構造的語彙論・意味論の体系構築を研究の最終目標に設定する潔癖主義に疑問を覚え、特定の環境に生きる地域生活者の世界認識の全像を語彙分析によって明るみに出そうとする、生活主義に立つ〈生活語彙論〉の実践と形式化のために費やしました。多忙な時間の連続でしたが、〈生活語彙論〉の構築が学界から広島学派と呼称され広く市民権を得ることができたのは望外の幸せだったと思っています。一日で消費される知の生産は別として、独自性と体系性が同時に要求される人文科学には、「効率主義」や「中期計画」は全くなじみません。
広大フォーラム31期5号
目次に戻る