夢やロマンを実現する力を!

広島大学長 原田 康夫




 新入生のみなさん、御入学おめでとうございます。難関を突破し、初志貫徹され合格の栄を得られましたことを、広島大学を代表して心からお慶び申し上げます。
 また、これまで皆さんを支えて下さったご家族の皆様にも、心からお祝い申し上げます。
 皆さんは二○○○年の入学です。いよいよ二十一世紀も皆さんの手で扉が開かれんとしています。
 我が広島大学は、昨年創立五十周年を迎え、新たな飛躍を誓いました。国立大学の中で、戦後五十年で一番はじめに大学の基盤、整備のできた大学は広島大学です。見ていただくように、この東広島キャンパスは、日本一広く、日本一整備されたものになりました。広島市内にある霞地区の大学病院でも、新たに病棟の建設が始まり、二年後には立派な病院に生まれ変わります。このように広島大学は、二十一世紀の日本を代表する大学へと邁進しているところです。
 さて、二○○○年問題で幕を開けました今年が、皆さんの大学生活の始まりです。
 今、世界は急速な勢いでグローバル化しています。好むと好まざるとにかかわらず、この波の中に皆さんは身を委ねなければならなくなります。
 二十世紀初頭に近代主義が確立し、資本主義のもとに工業化が起こり、世界の経済はパワー、量、スケールの点で急速に発展しました。
 即ち、二十世紀の成果の一つは、物質的な豊かさを満たしたことです。しかしながら、大量生産、大量消費、大量廃棄のために、地球資源の枯渇、環境破壊を引き起こし、地球温暖化などの問題が深刻になってきました。皆さんの世紀、二十一世紀は資源の再利用と環境破壊をくい止めることが急務であり、人と自然との共生の道を求めることです。
 また、二○五○年には、皆さんは六十五才を過ぎる年令になりますが、その時の日本の人口構成は、六十五才以上の人が三分の一を占める超高齢化社会になっています。
 したがって、今、皆さんが大学で学ぶことは、単に社会で活躍するための学問というだけではなく、人生全般にわたっての生き方を学ぶことが大切になります。
 それには、感性を磨き、自らを律する哲学を持たなければなりません。その上、夢やロマンを描き、それを実現する力を身につけることが二十一世紀を生き抜くことになるものと思われます。
 日本人は、感受性の優れた人種です。古くから日本の持つわび、さびの心は芸術の神髄に触れるものであり、受験勉強から解き放された今こそ、皆さんは自己内投資として、感性を磨いていただきたいと思います。さらに、グローバル化が一層進む情報化社会で生きるための語学と、情報技術をマスターせねばなりません。
 我が大学には、皆さんの将来のための教養と人生を豊かにするための学問の全ての用意が整っています。
 二十一世紀は、物質万能主義から解き放され心の時代です。皆さんは自然を尊び、神を畏れ、人を愛し、友と師を求め、志を高く持ち、目標を定め、日々情熱を持って精進し、それを一生継続すれば何事も成らざらんものはありません。人生全体からみれば短い期間ではありますが、二度とない青春時代に悔いを残すことなく、有意義な大学生活を過ごされることを祈るものです。
 最後に大変現実的なことですが、本学でも多くの学生諸君が交通事故に遭い、尊い命をおとす例もあります。どうか自分の命を大切にされ、大学生活を楽しいものにしていただくよう心から念願して、お祝いの言葉といたします。



 



広大フォーラム31期6号 目次に戻る