交通事故非常事態宣言について

 去る一月二十五日の連絡調整会議へ学生生活委員会より交通事故非常事態宣言(以下「宣言」と略す)を提案し、これが認められた。この文案を各学部・各研究科に伝えた。また、学生諸君にも意識の改革を願って配布した。
 こうした宣言を出さざるを得なくなった事情について説明をしたい。交通事故件数のみを各学部や研究科から報告として上がってくるものに限定すると、平成十一年度は交通事故死亡数はゼロである(二月現在のもので十一年度確定数ではない)。また西条警察署の資料によれば、第一当事者数は若干増加しているものの第二当事者は減少しており、あわせて昨年一三三件あった交通事故は、今年一二四件でやや減少しているとみなせる。
 交通事故件数がやや減少傾向にある中で、昨年末の十一月十二月に三件の重大な交通事故が発生した。いずれも本学学生や院生同士の事故であり、双方ともに悲惨な事態に陥っている。乗用車とミニバイク、乗用車同士等と形は色々であるが、被害者は生死の境をさまようような事態になっている。
 こうしたケースでは、被害者も加害者もない。どちらが被害者でも、どちらが加害者でも、ただ痛ましく、辛い想いが重なっていく。自動車保険が助けてくれる部分と、どうにもならない部分が残っていく。この点だけは、学生諸君にも十分認識して欲しいと思う。
 さらに統計的な数字を示すと、平成元年の大学移転が本格的に始まったころからの数字でいえば、学生事故死亡数が二十八名、巻き込んだりの学外者死亡数は十一名で、十年間で合計三十九名の死亡があったことになる。誠にすさまじい数字である。こんな状態が「非常事態」なくて「日常事態」になってしまっている・・これこそが「非常事態」である。
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 宣言に際しては、全学の学生生活委員会と施設整備委員会にそれぞれ専門委員会をおき、さらに宣言後も二つの委員会に加えて環境保全委員会の三委員会が歩調をあわせて、学内の交通事情を調査し、改善点の検討を続けてきた。
 また警察当局や東広島市にも信号機設置や植木の移動などを含めて陳情を行ってきた。さらには、学生生活委員会と学生課職員で、「宣言」のあと時間と場所を決めて交通指導に当たるなどの取り組みを展開している。
 この交通指導で思うことは一部の学生ではあるが、ミニバイクの二人乗りやノーヘルなんてのは、何の違反意識もなく、構内では全く意に介していないことが感じられる。また、違反と思われる行為をとるのは別に学生だけの特許でもないということを思い知らされる。
 また、最近の交通事故関連の新しい傾向として、留学生が事故当事者になるケースが観察されるようになってきた。日本の交通事情や習慣や保険制度に馴染んで欲しいと思うし、それがないばかりに日本にきてとんでもない目にあうという事がなければいいがと気をもんでいる。この点に関しては指導教官等から格別な指導をお願いしておきたい。
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 今現在、事故数が減少しているとかいうのは、あくまで学部や研究科から届け出のあったものに限られている。実際にはこの届け数の数倍の交通トラブルがあって、これらは秘密裏に処理されていると推測している。
 学生の事故も東広島市内に限らず、学生たちの郷里やアルバイト関係まで含めると相当に広い地域に分布している。そして、事故を我が身だけで処理するというのは現実には厳しいものがある。大学も事故届けを聞いたから、「何ができるのか・・」と正面きって問われれば困るが、チュータも指導教官も相談にはのれる。ひとりで苦しむのはやめて、一時でも早く、相談をもちかけてくれる事を願う。
 さらに交通事故に関して「悪質」なものは「懲戒」の対象にすることも確認されている。例えでいえば「飲酒運転」で重大な「人身事故」を起こせば、大学も何らかの懲戒を検討するということである。
 この宣言が直接的効果として、交通事故をゼロにしてくれるとは思わないが、新入生を迎える時期でもある。この宣言が学生諸君と教職員全体に対して意識のイノベーションを図ってくれることを期待している。
学生生活委員会(文責 松岡 重信)





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