大学院先端物質科学研究科


激動の社会へ

先端物質科学研究科長 山西 正道


 修士課程修了おめでとう。諸君のうち量子物質科学専攻修了者は、当研究科の第一回目の修了生として、また、分子生命機能科学専攻の修了者は、第二回目の修了生として、これから博士課程に進学、あるいは社会に出て活躍することになります。
 いま、日本の社会は、(無論、大学を含めて)激動の時代に入ったと言われています。例えば、企業における給与制度も大きく変わろうとしています。私の聞いた例では、これまで慣行的になされてきた通勤手当や扶養家族手当の制度を撤廃し、仕事の内容に見合った給与部分だけにしようとする企業の例です。明らかに、こうした新しい制度は、意欲的に仕事に取り組む能力の高い人材を確保しようとする企業の意識を表しています。
 これから新しい道に進む諸君、意欲的に、そして何より健康に留意して事に当たって下さい。諸君の努力はきっと報われるはずです。

 

しなやかにプロとして

量子物質科学専攻長 遠藤 一太


 この二年間いかがでしたか? 多分、無我夢中でやってきて、ふと気がつくと修士論文締め切りが目前だったという人が多かったのではないでしょうか。最後のふんばりが実って修士号を取得された皆さんは、大学院入学前とは格段に違う「プロの世界」に一歩踏み込んだのだという実感を味わっておられるでしょう。(そのはずです。)今後の方針はどうでしょうか。ひょっとして、この修士論文研究に直結した道を一途に狙ってはいませんか? 決断の前に、「別の方向に進んだほうが、この経験をもっとうまく生かせるかもしれない」ということも一度考えてみてください。
 一方、量子物質科学専攻の第一期生を送り出すまでは、教官のほうも無我夢中でした。よく考えて教育プログラムを作ったつもりでも、思わぬ酷評を頂いた部分もありました。皆さんが数年後にこの二年間のことを振り返って見る機会があれば、自分はどういう教育を受けたのかとあらためて考えてみてください。役に立った授業、時間の無駄だった授業、良い刺激を受けた、つまらないことをやらされたなど、後になってはじめて見えてくる点があるものです。その結果をお知らせくだされば幸いです。但し、このようなフィードバックがくるころには、私は停年退職しているでしょう。また、大学というシステムが、がらっと変わってしまって、どこに話を持ち込めば良いかわからなくなっているという可能性もあります。
 社会変化の時定数はどんどん短くなっています。その一方で、教育の時定数はむしろ長くなりつつあります。このミスマッチをなんとかする方法も諸君が考え出してくれるものと期待しています。  

 

豊かな才能を伸ばそう

分子生命機能科学専攻長 小埜 和久


 先端物質科学研究科博士課程前期を修了する皆さんの門出を心からお祝い申し上げます。これから迎える輝かしい未来に、希望で胸膨らませ心躍らされていることと思います。
 今日、わが国では、規制社会から脱却し、真の国際競争力をつけるために、構造改革、意識改革の嵐が吹き荒れ、大きな社会変革を迎えています。皆さんには、独創的なアイディアを育む弛まない努力、何事にも意欲的に取り組む姿勢と遣り遂げる強い意志が求められきます。この激動する変革の時代こそ、努力次第で、培ってきた才能が開花できる絶好のチャンスでもあります。
 本研究科でも、「生命」と「量子」の学際領域を開拓していく独創性の高い研究姿勢が芽生えはじめています。皆さんも、もう一方では、異分野の人たちとも積極的に交流して視野を広げ、創製意欲をかき立て豊かな才能に更に磨きをかけてください。
 思ってもみない展開で、充実した豊かな人生が迎えられることと思います。皆さんの活躍を記念しております。  

非常勤講師の先生を囲んで(筆者後列左)
 

 



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