大学院国際協力研究科


IDECの使命を担う諸君へ

大学院国際協力研究科長 中山 修一


 新ミレニアムを迎えたこの記念すべき年に、大学院国際協力研究科(IDEC)から博士課程前期を修了する五十七名の諸君、また、同後期課程を修了し、めでたく博士の学位を授与される十名の諸君に、教職員一同を代表し、心から祝福を送りたい。修了おめでとう。
 「世界の平和の創造と繁栄に向かって果敢にチャレンジし、専門知識だけでなく複雑な事象に対応できる総合的判断能力を備え、対象地域の社会・文化の特質をより深く理解し、人々の生活の質的向上に貢献できる知力を備える」と言うIDECの使命宣言を忘れないでほしい。世界は依然として、人類システムの変革期に直面し、多種多様な地球的課題は、解決の道が不透明で、ますます複雑な様相を呈しながら、われわれの前に立ちはだかっている。
 IDECを巣立つ諸君は、「感性(Sensitivity)」、「自己責任能力」、「国際協力・協調精神」を忘れないでほしい。そして大きな夢をもって、力強く新しい社会に一歩を踏み出し、IDECの使命の実現のために恵まれた能力を存分に発揮してもらいたい。

 

学ぶ喜びに満たされた二年間

教育文化専攻博士課程前期 熊野 敬子


 IDECで多くの若い院生と共に学ぶ中で、二十年前の若かりし大学時代をよく思い出しました。あの頃の私は、希望に胸ふくらませて入った大学で、どうしても「学ぶ意味」を見つけられず、悶々と過ごしてしまったようです。その私が、教師という仕事や結婚、子育ての体験の中で、職場や地域社会、家庭という実社会での問題を解き明かしてくれる学びにもう一度向かいたいと切に思ったのです。ですから、二度目の大学での学びは本当に充実したものとなりました。何といっても、多くの学識豊かな先生や優れた本と出会い、人間の英知に触れることができたのが貴重でしたし、個人的な自己の体験が、普遍的な論理に置き換わった瞬間の喜び、まさに学びの喜びを味わうことができました。また、若い院生たちとタイの中学校で行った授業実習は、今後も教師を続ける私にとって大変貴重な体験であり、ずっと心に残ることでしょう。さらに、IDECは、私のような社会人や、多くの留学生に恵まれたところで、これらの人達からたくさんの刺激を受けた二年間でした。このような充実した学びを導き励まして下さった多くの方に感謝するとともに、何よりも家族の支えに心から感謝しています。

タイの中学校での授業実習風景(筆者中央)
 

 

変わったはずの自分

開発科学専攻博士課程前期 森口 俊宏


 修了するにあたり、大学生活六年間を振り返ってみることにした。自分は大学に来て、何が変わったのだろう。入学前と今を比べると変わっていないはずはない。しかし、自分のどこが変わったのかを言葉で説明しようとしても、なかなかうまく言い表すことができない。確かに変わっているのに…。無理に表現しようとすれば、いろいろある。例えば、一人暮らしをするようになって自立したとか、自分の専門において進むべき道が見つかったなどである。こう表現してみるものの、何か言い足りないような気がする。自分の内部においてもっと決定的に変わったことがあるはずなのに。大学時代には、それまで経験しなかった様々なことをやってきたが、人生の転機になるようなことはなかったのだろうか。いや、あったはずだ。たぶん、転機というものは自分がある出来事を「よーっし、転機にしてやる」くらいの心持ちがないと、転機にならないのではないか。そう考えると、自分にもそういうことが確かにあった。大学生活、これを転機にしてやると思ったことは何度もあるが、そのようなことが自分を変え、人生の方向付けになっているのかもしれないと、今思うのであった。確かに私は変わったのである。

研究室キャンプにて(筆者左端)
 

 



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