理 学 部

学んだものを社会に生かせ

 理学部卒業生と理学研究科修了生を送るにあたり、松浦博厚理学部長、清水頼子さん(理学研究科博士課程前期生物科学専攻二年)、江原明人君(化学科四年)の三人に集まってもらい、卒業・修了にあたっての思いを語ってもらいました(広報委員)。


研究を通して得る責任感と自律性

松浦: 大学では、専門分野の知識や技術を習得するだけでなく、人間形成に必要ないろいろな知的能力を身に付けることが大事であると思います。学生時代に得たこれらの貴重な知的財産は、これからの人生においてさまざまな形で活かされてくるはずです。また、高校までの「与えられる学習」から大学での「求める学習」への変化は、社会生活で必要な自律性の育成につながるものです。大学では、自由な雰囲気のもとで、自らの判断で自分を鍛え、磨き上げていくことができたはずです。さらに学部と大学院でも、意識の上で大きな変化があったと思います。卒業・修了される皆さんは、有意義な学生生活を送ったことと思いますが、お二人は今どのような思いをもっていますか。

清水: 学部生と大学院生とで、意識的に大きく変わったと思います。卒論生として配属されたときには、言われたとおりに行動していましたが、大学院に入ると自分で考えるようになり、それだけ責任感を感じることが多くなりました。また、ほかの研究所の方と接する機会が増えたため、その分野での最新のトピックについて話すことができ、自分の研究とは直接関係なくてもよい刺激になります。人と話す楽しみを知った分、学会会場などでも積極的に話を聞くようになりました。自分の言いたいことを的確に示し、アピールすることは、研究の場でなくても必要だと思います。このような能力はさまざまな人たちと話すことで鍛えられると思いますし、それによって新たに人脈が広がっていくことも楽しみの一つですね。

江原:「光陰矢のごとし」とは言いますが、そのとおり大学四年間は本当に短かったと思います。特に四年になり研究室に配属されてからの一年間は、これまでの二十二年間の中で最も短かかったように感じました。これも毎日が非常に充実していたせいだと思います。"化学"と聞くと"白衣を着てフラスコをフリフリ・・・"なんて思われがちのような気もしますが、僕の卒業研究は白衣にもフラスコにも縁がありません。簡単に言うとコンピューターを使って分子の振動を解析しようというもので、毎日がパソコンやデータとの格闘でした。徹夜もしばしばでしたが、先生方や先輩方の熱烈な指導を受けて、大変愉快な研究生活を送ることができました。

松浦:清水さんの研究についても話してください。

清水: 子供の頃、よく疑問に思っていたことは「なぜからだが動くのか」ということでした。手を動かそうと頭で考えると同時にもう動いている。そういった情報がどのように伝わっていくか興味をもっていました。現在は、神経の興奮などを制御しているタンパク質を扱っていて、どのような構造をして、それがそのタンパク質のもつ機能とどのように関係しているのかについて調べています。

楽しい思い出

松浦:研究のほかにいろいろ楽しい思い出があったと思いますが・・・。

江原:僕は入学時からバイクを乗りまわしているのですが、化学科のバイク仲間と夏や冬の長期休暇を利用して、九州や中国地方をツーリングしてまわったことが一番の思い出です。それぞれ一週間ほどの日程でしたが、みんなお金が無いので寝袋でいろんな所で野宿をしました。真冬の阿蘇や真夏の鳥取砂丘は本当に大変でしたが、毎日各地の温泉だけは欠かしませんでした。大学生らしいなとみんなに羨ましがられる思い出です。

清水:私は、カナダでの国際学会に参加することができたことです。学会中は大学の寮に泊まっていたのですが、そのときのルームメイトだったアメリカの大学の学生といろいろな話ができたことはとてもいい経験になりました。つたない英語で、一生懸命に考えて話したことを、遮ることなく最後まで聞いてくれたことを非常にうれしく感じました。

松浦:お二人の話から、大学で得たものが大変大きかったことがよく分かりました。今年度卒業・修了される皆さんが、大学で学んだことをそれぞれの進路の中で生かしながら活躍されることを願っています。
広大フォーラム31期6号 目次に戻る