自著を語る

『データ解析言語S』
著者/坪田 信孝
(A5版,407ページ)
6,000円(本体)
1998年/科学技術出版
 



〈納得して使える統計学〉
 不思議なことに、いまでも多くの医療者は統計学を勉強しようとしないのです。にもかかわらず、沢山の統計学を応用した論文が生産されています。手法の意味を理解せず、自分の言葉で統計手法の言葉を使うことをしないで、どうして論文が書けるのかは不思議なことです。私は公衆衛生の分野の中で統計学の勉強をしていたので、なんとか分って使ってもらえるようにしたいと学生教育の中でいろいろ試みてきました。
 統計学を分かって使える、納得して使える、自分の言葉の文脈の中で統計学の用語を使えるようになるには、理論の理解だけではだめなのです。自分のデータで自ら処理して結果を解釈する、それを繰り返す、という訓練が必要です。自ら処理するにはもちろんコンピュータとソフトウェアが必要です。
〈S言語と統計学〉
 「S言語」はAT&Tで開発されたデータ解析用の言語です。データ解析はこのデータにはこの処理という単純な約束があるのではなく、処理の結果をみながら次の処理を考え別の処理を試みる、あるいは前処理の結果を次の処理の入力にする、というような過程が重要です。「S言語」ではこれが自由にできます。また、データを「塊(かたまり)」として扱えるため、数学的記述をS言語の式に変えることも比較的容易です。しかし、「S言語」はちょっと難解とおっしゃる方も多いのです。それは、統計学とソフトウェア技術を同時に学ばなければならないからです。この本では、統計学学習の章では、S言語を使って練習するけれども、統計学を学ぶことに集中できるように構成しています。また、S言語の学習は統計学を知らなくても学習できるようにしました。どうぞ一度読んでみてください。そしてS言語を使ってみてください。S言語は総合情報処理センターのシステムにあり、無料で使用できます。他学部の方にも役に立つと思います。


プロフィール        
(つぼた・のぶたか)
☆一九七四年岡山大学医学部卒業
☆一九八○年岡山大学大学院医学研究科公衆衛生学専攻博士課程修了
☆一九八○年広島大学医学部講師
 一九八二年同助教授
☆現在:同公衆衛生学講座に所属
☆研究・教育等:大気汚染の疫学研究を行い、倉敷市水島・川崎市の公害裁判で重要な証拠として取り上げられた。現場のニーズに即した産業保健システムを開発した。医学科メールサーバーなどの管理などを通じ、研究・教育・保健医療福祉の基盤として医療者に対する情報教育・人材育成が重要と考えている。




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