留学生の眼(77)




留学生の目から見た日本の習慣!?

文・ 周  東(Zhou, Dong)
大学院社会科学研究科
博士課程後期
経済学専攻


 日本と中国、地理的には近いのですが、実は遠いとも言えます。顔を見ただけでは中国人と日本人の区別はつかないし、また両者とも同じ漢字を使っています。そのためお互いに中身も簡単に分かるように思ってしまうようです。しかしながら、表に現れない考え方や習慣などについては、かなりの違いがあると思います。
 日本に来て以来、中国との違いに驚いたことがいくつかありますが、その一つは「割勘」についてです。あるとき勉強が終わった後で、「一緒に一杯やろう」と大学の仲間に誘われました。食事が終わって勘定を払うときびっくりしました。みんな自分の財布からお金を出しているのです。中国では、割勘の習慣はありません。職場の上司や誘った人が必ず支払います。(しかしながら最近では中国でも、若い人の間で割勘が少しずつ広まっているようです。)
 たばこを吸うときも違います。中国では自分が吸う前に、必ず相手にも勧めます。勧めないと、「相手をばかにしている」と受け取られるからです。
 食文化にも様々な違いがあります。例えば、皆さんは箸をどのように食卓に置きますか。日本では横にしますが、中国では縦に置きます。また箸の長さも中国の方が長いです。それはなぜでしょうか。皆さんも中華料理の丸いテーブルに着いたことがあると思いますが、そのとき料理を取るのに短い箸だったら取りにくいですね。長いほうが、遠くの料理も取りやすいのです。また隣の人の皿に料理を取ってあげるのにも、長いほうが便利だからです。他にも中国では、出された料理を最後まで全部食べてしまうのはよくないこととされています。日本では全部食べないと相手に対して失礼だと考えられていますが、中国では全部食べると「まだ充分もてなしていない」というように受け止める習慣があるからです。
 日本人はおみやげをもらうと、すぐにお返しをするということに気が付きました。贈ったほうは必ずしもお返しを期待しているわけではないのですが、お返しがないと、やはり何となく変に思うようです。一方中国人は、プレゼントをもらって、すぐにお返しをすると「物の交換」と同じことになってしまうと感じます。そのため、中国でのやり方は、「贈り物は受け取っておけばよい。その代わり、そのことをいつまでも忘れないでいて、次のチャンスがあるときにお返しをすればよい」というものです。
 招待されて、次に会った時の挨拶も違います。「先日はどうもご馳走さまでした」というのが日本人の礼儀です。しかし、中国人がこういう挨拶をすると、招待を受けたときに感謝の言葉は既に述べており、日を変えてそれを繰り返すのは、「またご馳走してくれ」という謎をかけたことになるのです。
 日本では現金を渡すときに、封筒に入れてから相手に渡すのが普通ですが、中国では、そのまま相手に渡します。
 日本に来て以来、素晴らしい国だと感じています。なによりも仕事を大変真面目にします。そして、相手の気持ちを感じとり、よく考えてものを言います。
 私たち留学生は、将来の夢を叶えるために日本に来ました。もちろん中国と日本では、先に述べたように、考え方や習慣などに様々な違いがありますが、「郷に入っては、郷に従え」という諺を念頭に置いて、外国での生活と勉強に積極的に取り組むことによって、自分の目標を実現できるように努力しています。そしてこれは私の人生において最も大切なこととなっています。

旅先にて



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