地道な日常活動と将来計画の検討の再開 

−平成11年度総合科学部学生相談室活動報告−
文・岩 村  聡(Iwamura, Satoshi)
総合科学部講師
     
一、カウンセリング

 平成十一年度の学生相談室への来談者数は、実数で一五四人、一〇%の減少。延べ数では五八三人、一%の増加であった。
 男女別来談者実数では、男性八十四人、女性七十人で、ともに減少した。
 学年別では、一年生四十二人、二年生二十四人、三年生以上四十一人、院生等四十七人で、一年生が四五%減少したが、院生等は六二%の増加だった。
 表1は、来談者実数と延べ数の相談内容別内訳である。
 実数・延べ数とも、「修学・進路関係」が著しく減少し、「心理・適応関係」が著しく増加した。「転科・転学部」は、前年度ほどの来談はなかった。「勉学・研究」の減少も続いている。「心理・適応関係」の中では、「対人関係」の増加が著しい。
 平成十二年度、学生相談室は、表2のような体制で、学生の相談に応じている。
 学生相談室は、広島大学の学生の相談なら、なんでも受けつける。
 勉強のしかた、成績不振、不登校、留年、休学、教員などの資格のとり方、留学、クラブ活動、宗教団体とのトラブル。進路変更、転科・転学部、大学再受験、就職、大学院進学、友達づくり、対人関係、先輩や教師とのトラブル。失恋、性格、自己開発、不安、劣等感、性的な悩み、セクハラ、いじめ、迫害。経済生活、契約販売やローンのトラブル。交通事故、大学への苦情、などなど……。(そして、相談室だけで解決しきれない問題は、どこへ相談したらいいかを一緒に考える。)
 カウンセラーとの相談の特色は、まず、一対一で必要なだけたっぷり時間をかけて、必要なら回を重ねて、相談に乗ってもらえること。また、相談の秘密が守られること。さらに、アドバイスの押しつけがないこと、などである。
 あなたも、いつでも気軽に学生相談室を訪ねてください。
 また、不登校、留年、ノイローゼなど、指導困難な学生をかかえてお困りの先生方。どうぞご遠慮なく、学生相談室へご相談ください。

表1 相談内容別来談者数
  実数(人) 延べ(日)

154 583
修学・進路関係 92 242
進路関係小計 61 127
  就職 1 1
  進学    
  留学・旅行 3 3
  休学・退学 3 4
  転科・転学部 25 28
  再受験 5 10
  留年・不登校 10 60
  その他の進路 14 21
     
  勉学・研究 16 42
  課外活動 3 5
  その他 12 68
心理・適応関係 57 310
  精神衛生 31 159
  対人関係 18 93
  自己探求 8 58
  その他    
その他 5 31
  経済生活 2 2
  その他 3 29


二、グループ

 学生相談室は、グループ活動も行っている。目的は、学生等の自己理解・自己確立や対人関係の発展である。
 「オープン・フライデー」は、授業期間中の毎週金曜日午後四時三十分から六時まで開いている。
 この年度は二十八回開催。参加者は実数で十七人。うち学部生十四、院生等二、教職員一。延べ数は一三五人。平均五人であった。学生の集まりがとぎれることのない活発な年だった。
 「土曜友の会」は、月一回土曜日午後二時三十分から五時三十分まで開いている。この会は、広大生のほか、卒業生や社会人にも開放している。
 この年度の開催回数は十二回。参加者は実数で二十四人。うち広大生十二、教職員二、卒業生五、その他五。延べ数は七十六人。平均六人であった。この年は、広大生の参加が増えたことが特徴である。
 この会の今後の開催予定日は、六月十二日、七月十日、八月十四日、九月四日、十月九日などである。
 これらの会は、「あたたかい仲間」の会を目指している。気楽な雑談を交わしたり、誰かが最近の生活や当面している問題を話したり、みんながそれに感想を言ったり励ましのことばを述べたりするような雰囲気になる。いずれも会員制ではないので、広大生なら誰でもいつでも参加できる。都合のいいときに(時間の途中からでも)自由に出入りしても構わない。参加者には、会費でお茶やお菓子やおいしいコーヒーなどが出る。
 こんなグループに、あなたも、気が向いたときに参加してみませんか?


表2 学生相談室案内
場所 総合科学部事務棟3階
電話 0824-24-6328,-6329,-6374







月曜日 9:00am〜5:00pm  大中 章、岩村 聰、大島 啓利
火曜日 9:00am〜5:00pm 竹味 千賀子、岩村 聰
水曜日 9:00am〜5:00pm 岩村 聰
木曜日 9:00am〜5:00pm 竹味 千賀子
金曜日 9:00am〜4:30pm 岩村 聰
4:30pm〜6:00pm *オープン・フライデー
土曜日 2:30pm〜5:30pm *土曜友の会(月一回)
(カウンセラーは、いずれも臨床心理士)
(*印は、グループ。担当、岩村)
   受付:塚本英子



三、活動報告

 平成十一年度の学生相談室への来談者数は、前年度に続いて、実数は減少し、延べ数は横ばいだった。より少ない来談学生に、より丁寧に対応する傾向が、さらに進行したといえるだろう。
 問題に直面している学生への相談援助は、私たちが頑張って、結果的にうまくいくこともあるし、一年や二年では改善がみられない場合もある。一時はよくなったかと思っていても、また挫折して動けなくなってしまうこともある。
 この年度の当初、私が面接継続中だった何人かの学生のうち、例えば、現在または過去に「不登校・留年状態」だった人は、十三人いた。この中には、うつ病の人や分裂病の人も含まれている。
 その十三人のうち、七人は、既に復学に成功していたりして、四、五月頃は勉学が軌道に乗っていた。
 他の四人は、「今学期復学チャレンジ中」という感じで、成功の可能性も挫折の危険性もはらんでいた。そのようなクライエントが、面接の約束の時間にこないときは、「またアパートに閉じこもっているのではないか」などとやきもきさせられるのだが、新年度早々は、いちばん心配な学生でも、なんとか登校が続いていた。
 残る二人のうち一人は、休学中だった。もう一人は、既に退学していたが、カウンセリングは継続していた……。
 あれから一年経ったいま、その人たちがどうなっているか、ふり返ってみると……。
 年度当初勉学が軌道に乗っていた七人のうち、六人は、その後、進級したり卒業したり進学したりすることができて安定しているが、残る一人は勉学が続かなくなって、進路変更に向かっている。
 「復学チャレンジ」をしていた人たちは、今では四人とも大学での勉学が続かなくなっている。が、事情は様々で、挫折して休学している人が一人、他の学校に再入学を果たした人が一人、活発なアルバイト生活に入っている人が一人、家庭的な事情で休学している人が一人である。
 休学していた人と退学していた人は、二人ともその後だんだん元気になって、アルバイトなどが軌道に乗るようになっている。
 そんな具合で、カウンセラーとしては一喜一憂ではあるが……。来談する学生の一人ひとりに愛情を注いで、努力や工夫を重ねたりすると、たとえ時間はかかっても何らかの手応えが得られることが多い。日常の活動は、地道にやっている限りは、なかなかやりがいのある仕事である。


四、将来計画

 そんな中、この年の年度末、学生相談室は将来計画の再検討を求められた。一九九七年に検討して答申し、一九九八年度の活動報告書に載せたばかりの結論を覆すような再検討である。今後の成り行き次第では、「学生相談室」は大きく形を変えるかも知れない。
 ことの起こりは、一九九二年に行われた「保健管理センターとの一元化を検討し流用定員一名を削減する」という部局長連絡会議の決定である。この決定は、総合科学部では、学生相談室運営委員会の審議を経ていないし、一九八九年の「学生相談室将来構想ワーキング・グループ」の答申にも反している問題含みの決定であった。しかし、今回は姿勢を少し前向きに変えて、とりあえず「一元化」の可能性等について、時間をかけて検討してみよう、と話し合っている。
 また、本学では、平成十二年度から西図書館内に「広島大学ピア・サポート・ルーム」が設置されることになり、私たちも、その設立準備などに協力した。
(※本号四十三頁に「ピア・サポート・ルーム」の紹介があります)
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