自著を語る

『水の総合科学』
編著者/播磨 裕,岡野 正義
(四六版,197ページ)
1,500円(本体)
2000年/三共出版
 



 本書は総合科目「水の総合科学」のテキストとして立案し、広範囲の領域の研究者の協力を得て一冊の教養書として編集したものである。水に関する書籍は沢山あるが、本書のように自然科学、人文科学、社会科学から芸術にわたる幅広い分野の研究者により執筆された本は希有であろうと自負している。
 生命は水の中から誕生し、水によって育まれ、進化を遂げてきた。地球上に存在する最もありふれた物質である水は科学的な観点からは極めて特殊な物質であり、様々な自然現象の中にその特異性を見いだすことができる。また、水は文学、美術、音楽、宗教といった人間の精神活動とも密接に関係している。このようにかけがえのない水について、その起源から科学的性質、精神面との関わり、水の実用的側面や環境問題など、水を多面的かつ総合的に考察するのが本書の目的である。
 同一の物質(水)について、異なる分野の研究者が各々異なる立場から執筆した文章を通して、物の見方の多様性を垣間見ることができるであろう。さらに、水を通してそれぞれの研究者の専門領域に触れ、学問の多彩さや面白さを感じとってもらえれば幸いである。
 以下に各章の見出しを記す。
一 水の起源
二 水の性質―水の不思議
三 生命の発生と水
四 植物の中を水はどうやって上るか
五 動物の進化と水
六 動植物・人間の代謝と水の役割
七 水と油をつなぐもの―界面活性剤
八 おいしいビールをつくるための水
九 水道の水質管理
十 環境汚染と酸性雨・酸性霧
十一 実験排水の処理と処理水の再利用
十二 水利権
十三 空間造形に見る水のイメージ
十四 絵画における水の表現
十五 音楽におけるモチーフとしての水
十六 水のイメージを人類学する
十七 哲学の起源としての水


プロフィール        
(はりま・ゆたか)
☆一九五一年山口県生まれ
☆東京工業大学工学部卒、同大学院総合理工学研究科博士課程修了(理学博士)
☆広島大学総合科学部教授
☆専門:物理化学(機能性分子材料)





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