ユダヤ系アメリカ作家のなかで、その作品のユダヤ性が最も濃厚な五人の作家(Abraham Cahan, I.B.Singer, Bernard Malamud, Saul Bellow, Philip Roth)のユダヤ性に対する態度・考え方の共通点と相違点を究明しながら、各作家の作品の特性を比較検討するのが本書の目的である。
特にMalamud, Bellow, Rothの主要作品に重点を置き、同化と疎外の二重性の問題、ユダヤ人としての受難と苦悩、呪縛と解放の循環、独特のユーモア・ペーソス・サタイア、登場人物と文体、読者の受容などの観点から考察を進めている。
ユダヤ系アメリカ文学の本質と特有の魅力を浮き彫りにするのが、本書刊行の究極の意義である。最後のSelected Bibliographyは三十頁を費やし、ユダヤ系アメリカ文学並びに五人の作家・作品研究を志す人のための指針とした。
具体的内容は以下の通りである。
第I章 序論
第II章 ユダヤ系アメリカ作家のパイオニア―Abraham Cahan
第III章 悪魔的激情の語り手―Isaac Bashevis Singer の三つの短編
第IV章 ニューヨークを舞台にした作品の閉塞性・倫理性・シュレミール性―Bernard Mala-mudの五つの短編を中心にして
第V章 「ユダヤ教への改宗」と「ユダヤ人の改宗」―Bernard Malamud, The Assistamt vs. Philip Roth, "The Conversion of the Jews," and "Eli, the Fanatic"
第VI章 The Ordeal of Jewishness in the Early Works of Bernard Malamud, Philip Roth and Saul Bellow
第VII章 崇高なる世界と俗悪の世界―Saul Bellow, Humboldt's Gift
第VIII章 東西都市文明批判とCordeの内省―Saul Bellow, The Dean's December
第IX章 結論