自著を語る

『広島大学公開講座 高齢社会論』

編著者/渡辺 満,小谷朋弘
(A5版,332ページ)
2,500円(本体)
2000年/成文堂

 



 日本の人口構造は急速に高齢化しているが、人々が安心して暮らすための社会制度はそれに対応しきれず、高度成長対応型の性格をいまだ残している。高度成長対応型を脱した、高齢社会対応型の社会制度とは、どんなものであろうか。
 社会制度を動かす原理は、まず、能率や量の拡大よりも、質の高さを問うようになるだろう。次に、拙速よりも確実性と安心感を重視するようになるだろう。さらに、人工的で便利なことよりも、多少不便でも自然と共生することを目指すようになるだろう。総じて、今後は個人を基礎にした制度を築き、その上での連帯・共同を図ることになるのではないか。
 私たちは、そのように高齢社会を展望し、高齢社会をできるだけ明るいイメージで描くことを目標とした。法学部の教官七名を中心に、総合科学部から石倉・材木の両先生、医学部から中村先生に加わっていただき、高齢社会をめぐる様々な側面からの現状把握と未来展望を提起するべく、一九九八年秋の法学部の公開講座をスタートさせた。
執筆者全員、まだ高齢期に達していないにもかかわらず高齢社会について語る、というわけで、人生の先輩からどのようなご批判を浴びることか、内心ヒヤヒヤしながら講義をしたのであった。
 その後、講演原稿に加筆修正をし、本書を編纂したのは奇しくも国際高齢者年である一九九九年、そして記念すべきミレニアムの年に成果として出版できたことを喜びとするものである。なお本書の成果は、今秋に、法学部の集中講義や、広島大学とRCC(中国放送)との共同事業である放送公開講座にも生かされた。
 貴重なご質問・ご意見をいただいた公開講座の受講者の方々、出版助成金をいただいた広島大学後援会、成文堂編集部の土子氏、牛久保氏(牛久保氏は法学部の卒業生でもある)、公開講座や放送公開講座の事務をとっていただいた法学部教務係や学生部教務課の方々に、心より御礼申し上げたい。


プロフィール        
(わたなべ・みつる)法学部教授・社会政策
(おたに・ともひろ)法学部教授・法社会学

公開講座の打ち上げにて
上段左より石倉(総),甲斐(法),渡辺(法), 水上(当時,法学部長),神谷(法),江頭(法), 下段左より辻(法),鈴木(法),材木(総)




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