教師冥利の報告

名誉教授 ・ 浅 川 末 三

 

 二十年間本学水産学科の教師をして、昭和五十二年に停年退職した。以降、馬齢を重ねて二十三年目の今年、思い掛けずも私の米寿を祝う会を催したいので出席をしてくれ、と卒業生の幹事から申し込まれた。まだ一年早いと言うと、冥土に行かれるキケンがあるので数え年で開くとのこと、承諾をした。
 六月三日、昔のキャンパスが公園となり、そこに建っているサンピア福山という会館を会場に、会を催してくれた。
 私の研究室の卒論生は五十数名であったが、広島・岡山両県下在住の殆どと、関東からの数名の計二十名が出席した。久々に福山に来た者は、校舎跡の変貌に驚き、働き盛りの四十代から孫のいる六十代の皆が、互いに久闊を叙し合って、時の過ぎるのを忘れた。
 何のことはない。私はダシに使われたのであろうが、この様なダシならば何度でも使ってもらいたい。今回ほど嬉しく、感謝の気持ちに浸ったことは、近年一度もなかった。「教師冥利に尽きる」とはこのことだと思った。冥利とは「善業の報いとして受ける幸福」と辞書にある。善業は何一つしなかったが、当日貰った寄せ書きを見る度に生ずる幸福感を報告せずにはおれなくなった。少し遅くなったが、止むに止まれず、本誌をお借りした次第です。
  平成十二年十月記
(投稿)




 




広大フォーラム32期4号 目次に戻る