ネットワーク社会の用語集 (3)




eジャパン

情報通信・メディア委員会 角 川 裕 次


 今回は、首相が施政方針演説で言い出した言葉「eジャパン」を取り上げます。しばらくの間、何かと耳にすることの多い語かと思います。IT革命のいま、重要なキーワードの一つです。数年で忘れ去られるか、「所得倍増計画」(池田内閣)や「日本列島改造論」(田中内閣)に次ぐ日本の歴史に残るキーワードとなるのか、今後の動向が気になります。



【eジャパン】
 「e」は electronic(電子的)の略です。つまり、日本を電子化しよう、ということだそうです。日本を電子にするということではなく、政府をはじめ地方自治体や民間の組織で、電子情報化を進めていこうということです。
 ただ単にコンピューターを導入して情報をコンピューターに入力しただけ、あるいは日本を縦断する高速ネットワークを敷設しただけでは、電子情報化したとは言えません。ネットワークで結んで情報の活用だけでなく、ネットワーク上でのさまざまな活動が法的に認められるよう現在の枠組みを変革し終わって、はじめて電子情報化ができたと言えるでしょう。
 例えば、役所への届け出や証明書の発行を、ネットワーク経由で電子的に自宅からできたとしても、電子的な方法が法的な効力を持たないと何の意味もありません。本気で日本を電子情報化するには、さまざまな法律の変更を伴う必要があり、大掛かりな作業となることが予想されます。
 また、ネットワークを通じて色々なことができるということは、逆にデータの安全性が不安となります。これまでは重要なデータは鍵の掛かった保管庫で保存されていたので、盗難に遭うことはあまりなかったのですが、ネットワークにつながってしまうと世界中のどこから狙われるか分かりません。また、電子情報だと膨大な情報でも短時間にコピーが可能です。正当な利用者かどうかの判断(認証)や、コンピューターシステムや通信システムの安全性(セキュリティ)も大きな課題といえます。
 e何とか、っていう言葉には実は元ネタがあります。IBM社(株)が数年前から「e-Business」という言葉をコンピューターの広告で使い始め、そのすぐ後ぐらいに本田技研工業(株)が自動車の広告で「e-Tech」という言葉を使っています。「e」を「electronic」と「いい(良い)」に語呂合わせをしたのでしょう。「E電」(JR東日本)との関係はないようです。


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