フォトエッセイ(54) 鉱物ウォッチング


文写真 北川 隆司
(Kitagawa Ryuji)
大学院理学研究科地球惑星システム学専攻
           


 トルマリン(電気石) 
Tourmaline
 

黒色トルマリン(ブラジル)

通称water melon(スイカ)(ナミビア)

内部と外部の色が異なるトルマリン(ジンバブエ)

緑色トルマリン(ブラジル)

ピンクトルマリン(ブラジル)

ピンクトルマリン(ブラジル)

ブラジルのペグマタイト鉱山にて
  
 
 ご好評?にこたえ、図に乗って再び登場いたしました。今回はトルマリンです。
 トルマリンは日本語で、電気石と呼ばれる鉱物です。熱を加えたり、圧力を加えたりすると弱い電気が発生することで、電気石と呼ばれます。以前、ある人が「トルマリンを使って発電ができないか」と相談に来られました。もちろん不可能ではないかもしれませんが、膨大な量のトルマリンが必要でしょう。
 最近、「トルマリンが環境革命を起こす」とか「トルマリン環境健康法」といった本が出版されたり、マスコミ関係で取り上げられたりしていますので、皆さんも名前は耳にしたことがあると思います。また、宝石好きの方は宝石名あるいは貴石名としてご存じでしょう。宝石としては一般に緑色が多いのですが、赤からピンク、青色、オレンジ、黄色、紫といったさまざまな色を持つ宝石としても知られています。トルマリンは鉱物としては別に珍しいものではありませんが、透明な青やピンク、緑色のトルマリンは大変珍しいものです。透明な緑色のトルマリンはエメラルドと見間違えるくらいです。また、一つの結晶中でもさまざまに色が変化しているものもあります。そのなかでも結晶の中心はピンク色で、外側は緑色を示すような珍しい結晶もあり、これは特にWater melon(スイカ)と呼ばれています。輪切りにするとまるでスイカのようです。しかし、一般に我々が鉱物としてしばしば目にするのは黒色の六角柱状結晶です。大学構内の花崗岩中にも僅かですがトルマリンが入っています。しかし、顕微鏡でしか見えないくらい小さな結晶ですので、宝石にできるようなものとは程遠いしろものです。
 トルマリンはなぜこのようなさまざまな色を持つのでしょうか。それはこの鉱物の複雑な化学組成によります。例えばマンガンが含まれると赤からピンク色を示し、酸化クロムが含まれると緑色、鉄だと青色、鉄とチタンだと黄色といった色に変化します。
 宝石になるようなトルマリンはどこで取れるのでしょうか。その主要な国はブラジルです。筆者はこの夏、トルマリンの産地、ブラジルに行って来ました。Minas Gerais州です。そこでは大小無数の鉱山があり、ペグマタイト(巨晶花崗岩・結晶が非常に大きい)と呼ばれる岩石から採取されます。大きなものでは長さ数メートルもあるような巨大な結晶も見つかるようです。
 それではブラジルやその他の産地からのトルマリンをじっくりご観賞下さい。


   

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