自動車の軽量化技術に関する特許
文・ 吉 田  誠
(Yoshida, Makoto)
工学部 機械材料工学講座助手  



 近年、環境問題の観点から自動車の軽量化が精力的に進められています。当研究室では、中小企業庁などの支援のもと広島の地元企業、広島県の公設試とともに自動車の軽量化に寄与する軽量、高強度部材の開発を行ってきました。ここでは、研究開発の成果として取得した特許二件について紹介します。
 自動車用などの内燃機関には、空気をシリンダー内部へ送り込むためにインテークマニホールドというものがついています。従来はアルミニウムの鋳造品や鋼のパイプで製造されていましたが、アルミニウムの展伸材で製造することで格段に軽量化することができます。このパイプの一端をシリンダーブロック、もう一端を燃料噴射装置に接合する必要がありますが、今まではコストと工数がかかる方法しかありませんでした。アルミニウムの表面が酸化膜で覆われていることが主な原因です。われわれはアルミニウム合金がシャーベット状態(セミソリッドという)の時に超音波を印可すると、表面酸化膜が破壊されて簡単にアルミニウムのパイプとエンジン関連鋳造部品の接合が可能になることを見いだしました。部品の成形加工と接合が同時に可能なので生産性も向上します。
 もう一つの特許は、やはり内燃機関用のピストンの製造プロセスに関するものです。現在、ピストンはアルミニウム合金でできています。アルミニウムの比重はおよそ2.7ですが、これをマグネシウム合金とすることで、比重を1.8程度にすることができます。ピストンは高速で往復運動をするので、慣性重量が小さくなれば燃費と運動性能が同時に改善されます。ところが、ピストンヘッドは燃料の燃焼によって三○○℃以上になるため、マグネシウム合金そのもので爆発圧力に耐えるために十分な強度を得ることは困難です。そこでわれわれは、次世代成形加工技術として注目されているセミソリッドプロセスと複合材料製造技術を組み合わせ、軽量で高温強度に優れるマグネシウムピストンを製造するための技術を発明しました。
 他にも広島県の自動車関連企業と共同開発した成果について国内外に続々と特許申請を行っています。


発明の名称:セラミックス強化金属基複合材料およびその製造方法
発 明 者:福永秀春、吉田 誠 他
特許番号:特許第三○四一四二一号
発明の名称:超音波鋳ぐるみ接合方法及び超音波鋳ぐるみ接合体
発 明 者:福永秀春、潘 進 他
特許番号:特許第三○○○三六六号





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