社会人学生を終えて


大学院工学研究科システム工学専攻
平成12年3月修了
越智 清史
 私は、平成二年に現在の会社に就職し、約八年の職務経験の後、工学研究科システム工学専攻の社会人修士課程に入学しました。そして多くの方々のご助力により無事修了することができました。本業の職務は、プラスチック加工機械の電子制御装置の開発ですが、日頃から制御技術についての知識を深めたいという欲求を持っていたことから、社会人学生となることを希望しました。会社からは学費全額の補助及び業務上配慮をいただくなど、業務を続けながら通学するという大変に恵まれた環境でありました。
 しかし、会社が支援するということは、逆に大きなプレッシャーとなり、自己満足では終われないという意識が強かったと思います。そのため、修士論文のテーマは、日常業務に密着した研究を行うこととしました。当初は、制御技術についての研究に専念するつもりでしたが、指導教官(地域共同研究センター馬場教授)との出会いにより、その考えは根底から覆されました。つまり、製品開発する上では、製品全体を把握、分析し、本当に核となる技術は何かを明確にする作業が必要である。その一方で具体的な制御技術の研究を(工学部第一類(機械系)佐伯教授のもとで)行い、それらを一つの論文としてまとめるというものでした。したがって、実質的には二つの研究を行うこととなり、社会人学生としての時間的制約の中、非常に厳しいものとなりました。
 紆余曲折しながらも二年間研究を続けましたが、私の場合、特に双子の娘の誕生ということも重なり、子育て、会社、論文という三つの仕事をこなすために最も必要だったものは、何よりも時間と体力でした。
 しかし、このような制約の中で、これまで専門の枠にとらわれていた自分自身の視野を広げることができたこと、そして制御技術の研究成果を新製品の開発の一助とすることができたことは、私にとって非常に価値のある経験となったと思います。
 会社勤めを十年も続ければ、誰もが多少なりとも新鮮さを失うこともあるかと思いますが、新鮮さを取り戻す一つの手段として、あるいは良き恩師との出会いを求めて、社会人学生というものを経験されてはいかがでしょうか。



プロフィール


◇勤 務 先:(株)日本製鋼所射出機設計部射出機制御技術グループ
◇専   門:パワーエレクトロニクス・機械制御
◇一九九○年 東京電機大学理工学部応用電子工学科卒業
◇同  年  (株)日本製鋼所入社
◇一九九八年 広島大学大学院工学研究科システム工学専攻博士前期課程入学
◇二○○○年 同大学修了



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