総合科学部
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世界へ翔よ

総合科学部長 江口 正晃

 二十一世紀の始まりという記念すべき年に卒業を迎えられる皆さんに、心からの祝福を送ります。二十世紀には、人類は世界各地で悲惨な多くの戦争を経験し、また資源の浪費で一見豊かな暮らしを手に入れました。しかし、その代償として、我々は、地球規模にまで達した環境問題を引き起こすなど、新たな問題を突きつけられています。また、目を国内に転じると、銀行をはじめとする大企業の倒産・合併、怒濤のような外国資本の流入そして情報通信技術の進歩など、今や我々の営みが、経済活動・文化活動だけでなくあらゆる分野で世界を相手にしなければならない時代になりつつあります。
 こうした大きな変革の時期には、皆さんが解の定まらない複雑な事態に直面することは避けられないでしょう。そういう時代だからこそ、皆さんには、時代の先を読む力、問題解決のための解析力、実行力そして何より雑草のような逞しさが要求されるでしょう。巣立っていく皆さんが、これまで総合科学部・大学院で培ってきた総合的な判断力を大いに発揮し、世界を舞台に飛翔しようとする強靱な意志でこれらの困難な問題にも果敢に挑戦されることを、また同時に、自らのためだけでなく、人類社会に貢献してくださることを願っています。

 

人生のカオス

総合科学部教授 水田 義弘(就職委員長)

 総合科学部・大学院での生活はどうだったでしょうか。両親や教師から教わったこと、自分で学んだことなどを武器として厳しい就職戦線を見事勝ち抜いた諸君に心から「おめでとう」と言いたい。心ならずもうまくいかなかった諸君にはさらなる励ましとエールを送りたい。
 最近、カオスという概念が数学ばかりでなく多くの分野で研究されています。辞書では「混沌」とありますが、初期の条件をほんの少し変えるだけでその後の状態が大きく変化して予測ができないようなものを指しています。惑星や彗星の動き、海の赤潮やくらげの異常発生、大気の循環などばかりでなく私たちの人生にもカオスがひそんでいます。
 これからの長い人生において、幸運ばかりでなくいろいろな不運に遭遇することもあるでしょう。不運に遭遇したとき、あのときはこうすればよかったと嘆きたくなるでしょうが、別の行動をとっていればさらに不幸な状態に陥っていたかもしれません。人生におけるカオスに立ち向かい克服するには、日々、精進と研鑚に励み自らの資質を高めることによってしかありません。諸君が無事人生の荒波を乗り越えていくことを切望しています。

 



祝ご卒業

総合科学部専門職員 北川 ふさえ(大学院・留学生担当)

 卒業という言葉を聞くと、一昔前の「愛と青春の旅立ち」という映画を思い出します。これは、アメリカ海軍兵学校の学生が厳しい教官にしごかれながら成長していく姿を描いたものです。その映画のラスト近くで、卒業後立場が逆転する学生(リチャード・ギア)に敬礼して送り出す教官の潔さに感動したものです。
 縁あって、教務の仕事が通算十一年になります。今年も皆さんの先輩からご活躍の賀状を頂戴し、嬉しくまた、頼もしく思いました。
 私は、「求めよ、然らば与えられん」という言葉が好きです。というより、この言葉に励まされて暮らしているといったところでしょうか。今年のお正月、ポストカプセル(つくば科学万博の際作成)により、十五年前の私から当時の私の写真が送られてきました。くっついてしまった贅肉のみを持て余しながら、この十五年間何を求め、何か努力したのかと反省しきりです。
 皆さんは、今無限の可能性を持って旅立って行かれます。大学で培った知識を元に、大きく羽ばたき、実りある生活をお送りください。そして、いつでもあなた方の青春の大学に気軽にお立ち寄りくだされば、嬉しく思います。

窓口にて

 






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