歯 学 部


卒業生を送る "Bon voyage!"

歯学部長 丹根 一夫


 皆さん、卒業まことにおめでとうございます。六年間に亘る勉学の成果により、めでたく卒業できたわけですから、その努力に対して最高の賛美を送らせていただきます。しかし、諸君が学んだことは、これからの歯科医学分野の医療人、研究者に必要となる初歩あるいは基本を修得したに過ぎません。これからの人生で諸君の研鑽の成果を判定するのが、おそらく四十歳前後になるでしょう。ある者は立派な臨床家に、またある者は世界に羽ばたく研究者に、それぞれ大成していることと思います。すなわち、これからの十数年が皆さんの将来を決めるのです。これには、学生時代にどのような勉強をし、どのような成績を収めたかは、あまり関係ないでしょう。
 最近の学生さんを見るに、目先のことに少しとらわれすぎており、将来を見据えた展望が欠けているように感じられます。すなわち、他人にはないものを追求することの大切さを認識して欲しいものです。最初は清貧に甘んじても、いつかは大きな花や実を結ぶことになるとの信念の下、着実に歩を進める者が最終的には勝者になると考えます。
 どうか広島大学歯学部を卒業したことを誇りにして、また、初心を忘れることなく絶え間ざる努力を継続し、他の同業者から羨望の目で見られるような人物になってくれることを切に希望します。

 

卒業おめでとう

歯学部附属病院長  赤川 安正


 歯学部の卒業生諸君、卒業まことにおめでとうございます。六年間一生懸命、歯学の勉学に励んできたその結果が、今日ここに花開いたのです。諸君がやってきた渾身の努力に対し、こころからの賞賛を送るものです。諸君は国立大学である広島大学歯学部を選び、入学を許可され、学んだわけですが、このことは、諸君が国民に対して歯科医師や歯学研究のリーダーとなることを約束したことにほかなりません。従って、諸君はいい意味での誇りを持ち、リーダーとなるべく立ち振るまい、先頭に立って、より安全な、より高度な歯科医療を提供しなければなりません。困難な壁にぶつかった時は、その誇りを忘れずに、一生の友であるクラス仲間と共に乗り越えてください。
 二十一世紀の初めに文字どおりスタートをする諸君は、大きな希望に燃えていることでしょう。希望は自らの夢があるからこそであり、その実現の基礎となる国民の信頼のかたちは、諸君が一つ一つ丁寧に、目にみえる事実を積み重ねる努力をすることによってのみ、確立できるはずです。大きな成功を祈っています。

 

実験室での生活を振り返って

大学院歯学研究科 新谷 智章


 今思えば臨床、研究共に自分の未熟さを痛切に感じ続けた四年間でしたが、周囲の人たちに支えられ無事卒業を迎えようとしています。この間ほとんどは実験室で過ごしましたが、それまで実験室などにはほとんど立ち入ったことがなくそこは不思議な空間で初めの頃は戸惑いをかんじていました。そのような私が一日の大半を実験室で過ごしていくうちに慣れてきて最近では、診療室より落ち着くな、とも思うようになりました。しかし学内発表会で発表できるような結果は出ず、楽観的な私も不安な日々を送ったことも何度もあり、その度に的確なアドバイスをおくって下さった先生方には本当に感謝しています。
 もうすぐ卒業で四月からは、新しい環境での生活がスタートしますがこの四年間で得た経験を生かし、めまぐるしく進歩する歯学に後れをとらないよう頑張っていきたいと思います。

(筆者後列右から2人目)


 

いま、思うこと

歯学部歯学科 小澤   仁


 六年前の自分を思い出して見ると、大学生活への期待と不安で胸がいっぱいだった気がします。そして今の自分はというと、これから社会へ出ることへの期待と不安で胸いっぱいです。
 この六年間は、僕にとって本当にかけがえのない時間だったように思います。友達と授業を受けていた時間、酒を飲みながら語り合った時間、クラブに打ちこんだ時間、どれをとっても僕の大学生活には欠かすことの出来ない、思い出深い瞬間でした。
 もちろん大変なこともありました、でもすべては一緒に過ごしてきた友達や後輩たちが僕と一緒にいろんなことを本気で考えてくれて、本音をぶつけてくれたからこそのことであったと思っています。みんなに心から感謝しています。
 そして、僕らを一人前の歯科医師にするために教育してくださった先生方、看護婦さん。本当にありがとうございました。まだまだ一人前ではないですが、いつの日か先生方に立派になったと認めてもらえる歯科医師になれるよう日々努力していきたいと思っています。
 卒業の時を迎え、同級生だった仲間たちがそれぞれの道を歩み始めようとしています。みんなも期待と不安でいっぱいのはずです。
 「みんな、がんばろうな。」今、心からそう思っています。

(筆者左)


 



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