留学生の眼(81)




残念だったこと、腹が立ったこと  嬉しかったこと・・・

文・ シピローワ・アンナ(Shipilova, Anna)
  社会科学研究科博士課程前期1年
  (ロシア,ハバロフスク出身)



 私たち留学生は、国に帰ったら、「日本の生活はどんなもの」とよく聞かれる。一方、日本人も、「あなたの国の生活は、大分違うでしょう」と聞くのが好き。日本に来てからもう二年、その間に色々なことがあった。帰る切符があればすぐ帰りたいくらい寂しい日があり、また日本に来てとても幸せだと思った日もあった。結局、自分の国の習慣と日本の習慣が違っても、毎日毎日、日本人の中でいっしょに生活を送らなければならないが、日々の流れには楽しいこともあり、悲しいこともあり、腹が立つこともある。そのような私の感じ方が、日本人と異なっているかどうか、私には良くわからない。この機会に、この二年間に感じたことと思ったことを書いてみたい。皆さんの気持ちや考え方とマッチしているかどうか判断してください。


残念だったこと

 挨拶の時に、お辞儀をするのは、日本の独特の習慣だ。皆に教えてもらって適当な時にお辞儀をするのにはやっと慣れてきた。でも相手にスマイルして、相手が無表情でそれを受け止めるのには、なかなか慣れることができない。日本人は、あまりスマイルをしないのは残念だと思う。
 国際化について話していると、日本人はよく外国人を自分と異なっている不思議なものとみなしているように思う。時々、日本人の関心があるのは、私個人としてではなく、外国人だから興味があるじゃないかなと思ったことがある。このような「外」のものとしての特別な扱い方には、残念な思いをする。
 留学生の中では、長く日本に住んでいても、片言の日本語でしか話せず、住んでいる国の文化や習慣を少しも習おうとしない人がいる。研究で忙しいということは分かるが、このようなチャンスを逃すのは勿体無いなと思う。


腹が立ったこと  

 日本語を一生懸命に勉強しても、たくさんの本を読んでも、自分の意見を言いたい時に、言葉が足りなくて、ちゃんと伝えられない時には、腹が立つ。
 日本人の友だちに、「これは日本文化だから、あなたは外国人だから、あなたには分からない」と言われたら、腹が立つ。
 先生が授業にしょっちゅう三十〜四十分遅れて教室に入ってきて、お詫びをせず何気ない顔で別の話しをする時、このような偉そうな振る舞いには腹が立つ。


嬉しかったこと   

 日本人が表情をあまり出さない民族であることは周知の通りだが、日常生活では、表情なしの顔をみて、困ったときもあった。無表情の顔は、外国人にとって厳しく見えるので、この人に嫌われているのじゃないかなと思う。しかし、しばらく経ち、気持ちを控え目にしか表さない日本人が、私に対し温かい気持ちを表すようになる瞬間はとても嬉しい。
 外国人は、「今日は」と「さよなら」しか言えない時でも、日本人は「日本語が上手ですね」とよく褒める。自分も、日本に来たばかりの時、下手な日本語でしか話せなかったのに、よくこんなふうに言われたので、今は、それは応援の言葉として受けとめた方がいいと思っている。でもただ一度、先生に「この数カ月にあなたの日本語は上達したね」と言われたとき、ほんとうに嬉しかった。
 金曜日の夜に、日本人や外国人の友だちと夏なら居酒屋に行って、冬なら鍋料理を一緒に作って、一週間の悩み事とか嬉しいことの話しを交わしながら、相手の国籍に固執せずに、わいわいやるのは一番楽しいときだ。そんな時、みんなと日本ですごせてとても嬉しいと思う。

 これは、私の日本留学生活のなかで、感じたことのごく一部です。日本に来て、色々な人と会うチャンスと色々なことを習うチャンスができて、非常に嬉しく思う。これからも、勉強しながら、日本の生活を楽しみたい。皆さん、私たち留学生の応援をお願いします。
(原文・日本語)



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