新しい評価システムについて 

広島大学評価委員会委員長
甲 斐 克 則

 



一 はじめに

 大学には、現在、大きな波が押し寄せている。従来の閉鎖的体質を改め、外から見える大学を作ること、大学が果たしている社会的責務を社会に公開すること(説明責任)が求められている。広島大学では、これまでの自己点検・評価活動に一定の意義と評価を与えつつも、その限界も自覚し(これらの点については『広島大学白書5 新しい大学像を求めて ―21世紀の新たな自己点検・評価システムの構築に向けて―』を参照)、「広島大学評価実施要綱」(平成十二年六月二十日付部局長会議承認)に基づいて、「広島大学自己点検・評価規程」(以下「規程」という。)の全部改正(平成十二年七月十八日付)を行った。これに伴い、平成十二年十月一日より、旧自己点検・評価委員会を発展的に解消してできた新たな「広島大学評価委員会」(以下「評価委員会」という。)が活動を始めた。すでにこれに先立って、国立学校設置法に基づき設置された大学評価・学位授与機構も、平成十二年四月から活動を開始しているが、この第三者評価機関の評価にも耐え得る「内による外部評価」機能を担い、自律的で多元的な評価を行い、大学の個性を伸ばし、教育研究活動等の改善につなげることが、新しい評価委員会に期待されている。そのためには、広島大学の各構成員にこの新たな評価システムの趣旨と活動内容を十分に理解していただく必要があると思い、初代の評価委員長として一文を寄せることとした。


二 評価委員会の目的および基本方針ならびに評価事項

 まず、評価委員会の目的は、何よりも「本学の活性化及び教育研究活動等の質的な向上を図るとともに、これを通して中期的・長期的観点に立って本学が策定した大学像の実現を目指し、かつ、本学の社会的責任を遂行すること」にある(規程第二条。以下、規程に即して述べるが、条文は略す。)。
 次に、基本方針は、四本柱から成る。第一に、教育研究の自由を尊重しつつ、大学の使命実現と本学構成員の意欲を高めるために行う。第二に、専門的な知見を基礎とし、公正かつ客観的で信頼性の高い評価を行う。第三に、自律的であるとともに、第三者の意見を踏まえた評価を行う。第四に、評価の方法および指標については、継続的に調査研究を行い改善に努める。以上の評価の基本方針に則り、評価委員会は様々な活動に取り組んでいるが、具体的な評価事項は、教育活動に関すること、研究活動に関すること、社会貢献に関すること、大学運営に関すること、およびその他必要な事項、である。


三 評価委員会および各部会の任務・構成と活動状況

(一)評価委員会の構成・任務
 評価委員会には、教育評価部会、研究評価部会、社会貢献評価部会、大学運営評価部会の四つの部会と、調査・研究部門が置かれている(評価組織図参照)。評価委員会の構成メンバーは、これらの各部会の座長、副座長、調査・研究部門の長、学長補佐のうち学長が指名した者、および学長が必要と認めた者若干名から成る。評価委員会の任務は、第一に、前記の評価事項について、全学的な評価を行うための企画、立案および実施の統括を行うことにあり、第二に、具体的な評価項目の決定、第三に、部会、ワーキング・グループ(以下、WGという。)、調査・研究部門、評価組織連絡協議会、その他評価に関する必要事項を審議し決定することにある。現在、十名の委員が週に二回のペースでこの任に当たり、全学のグランドデザインを検討している。

(二)各部会等の任務
 発足以来、各部会とも、座長、副座長を中心にすでにハード・スケジュールで活発な活動を続けている。その任務を紹介しておこう。
 教育評価部会および研究評価部会の任務は、a.教育または研究評価に関するグランドデザインの立案、b.必要に応じて評価対象別のWGの設置(委員の選定を含む)、c.各評価対象別WGが実施した評価の総括、d.評価案に対する不服申し立ての審議(必要な場合にはWGでの再検討要請)、e.評価結果の委員会への報告、である。現在、年度内の完成を目指してそれぞれグランドデザインを作成中である。なお、多様な教育、研究に対する評価を行うため、実際の具体的評価は、WGを設置して行うことになる。
 社会貢献評価部会の任務は、a.社会貢献評価に関するグランドデザインの立案、b.社会貢献に関する情報の収集および情報に基づく分析と評価、c.評価案に対する不服申し立ての審議、d.評価結果の委員会への報告、である。
 大学運営評価部会の任務は、a.大学運営評価に関するグランドデザインの立案、b.大学運営に関する情報の収集および情報に基づく分析と評価、c.評価案に対する不服申し立ての審議、d.評価結果の委員会への報告、e.評価結果の活用に関する検討、である。
 調査・研究部門の任務は、円滑な評価活動および評価システムの改善・熟成に資することにある。具体的には、a.教育、研究、社会貢献および大学運営に関する資料の恒常的収集とデータベース作成、b.情報収集のためのフォーマット作成、c.各部会等の要請に応じ評価のための資料提供、d.評価の指標、方法等についての調査研究、である。現在実施中のサイテーション・インデックス等の調査も、ここに含まれる。
 なお、評価委員会と部局等委員会、あるいは各部局等委員会間の連携を図るために、評価組織連絡協議会が置かれている。その構成員は、評価委員会の委員長および副委員長、各部局等委員会の委員長、各部会の座長、調査・研究部門の長、から成る。これによって、評価委員会と各部局等の自己点検・評価委員会との「好ましい協力的緊張関係」が形成されることを期待したい。




四 第三者評価機関の動きと今後の評価委員会の課題

 最後に、第三者評価機関の動きと今後の評価委員会の課題について述べておきたい。
 平成十二年度に実施される大学評価・学位授与機構による大学評価の対象機関が公表された。全学的テーマ別評価として、教育サービス面における社会貢献(全国百十二機関)と教養教育(九十五機関)が対象とされているほか、広島大学は、分野別教育評価として、理学部、理学研究科が理学系分野六機関の一つとして対象に選ばれている。現在、これに対処すべく、評価委員会、関係部会および関係部局で一丸となって作業を進めている。次年度以降も余裕をもって第三者評価に対処するには、評価委員会はもとより、部局等の自己点検・評価活動を自発的に計画的に実施していただくことを望みたい。それが、本来の大学評価の趣旨(大学の活性化、教育研究の質的向上)を実現する途でもある。


 プロフィール

(かい・かつのり)
☆一九七七年九州大学法学部卒業
☆一九九一年広島大学法学部助教授
☆一九九三年広島大学法学部教授
☆一九九九年四月から二〇〇〇年九月末まで広島大学自己点検・評価委員長、引き続き同年十月より広島大学評価委員会委員長





 
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