世界の大学シリーズ 57

MRCハウエル研究所 イギリス





哺乳類遺伝学部門
このビルディング内には,約25,000匹のマウスが,38の飼育室に分かれて飼育されています。

メインビルディング近景

メインビルディング入口

マウス飼育室No.24にて
Bruce M Cattanach先生と筆者。Cattanach先生の右腕には,
ヒトのAngelmans Syndromeの疾患モデルマウスがのっています。

ある日の昼食 研究所近くのパブで,Cattanach先生,Peters先生(Cattanach先生の奥様でもある)と
 Medical Research Council(MRC)は,イギリス国立の医学系総合研究所です。私は,その支部の一つでオックスフォード市近郊にあるHarwell研究所の哺乳類遺伝学部門に,1997年10月から2000年4月まで在籍しました。
 Harwell研究所は1947年に設立されましたが,その設立には,広島・長崎の原爆投下が関係しています。というのも,放射腺の人体影響を物理学的,生物学的に研究することを,当初の目的として出発した研究所なのです。以来50年余,マウスを用いた大規模放射腺影響研究の結果,名実ともに,マウス遺伝学のメッカとなりました。「この研究も,この研究もHarwellでなされたのか…」とため息が出てしまいます。
 2001年2月,ヒトゲノム全塩基配列の解読が終了し,世界中の研究者に公開されるところとなりました。これを見越して,Harwell研究所では,世界に先駆け1997年から,「飽和突然変異プロジェクト」を開始しています。強力な変異原物質で生殖細胞ゲノムに突然変異を誘発し,この変異を受け継いだマウス系統をできるだけたくさん樹立しようというプロジェクトです。これからのHarwell研究所が目指すところは,ヒト疾患モデルとなる系統を保有する「疾患モデルマウスバンク」です。「ヒトゲノム解読」を受けて,まずはヒトの遺伝性疾患(約5,000種類)のモデルマウスが,Harwell研究所から続々と名乗りを挙げることでしょう。
 原爆放射能医学研究所
 附属国際放射線情報センター助手
        新田由美子(にった・ゆみこ)



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